動物保護施設支援プログラム -いのちを支える、贈りものを- 動物保護施設支援プログラム -いのちを支える、贈りものを-

release 2019.10.29

犬や猫を家族として迎え、ともに暮らす文化が日本にも根づき、社会全体でペットとの幸福なカタチを模索する動きも盛んになっている昨今。保護された犬や猫を里親として迎えることから、寄付やボランティアまで、“よりよいペット社会”に向けてできることは増えている。そんな中、今や誰もが知る総合オンラインサイト『Amazon』は新しい支援のカタチを『動物保護施設 支援プログラム』としてスタートし、映画『駅までの道をおしえて』では保護犬が堂々と主要キャストをつとめている。よりよいペット社会のために……。それぞれの立場で、それぞれのできることを、あらためて考えるきっかけとしてみてはいかがだろうか。

2019年6月、動物保護施設で新しい飼い主を待ちながら生活する犬や猫を支援する『動物保護施設 支援プログラム』が『Amazon』でスタートした。家族としてペットを愛する家庭が増えた一方で、日本でペットを新しく迎える際に動物保護施設などから譲り受けるケースはまだ少なく、また動物保護施設の多くがボランティアにより支えられていることから、物資や資金が十分ではない実情もある。そうした課題に『Amazon』として向き合う一つのカタチが当プログラムだ。

主な特徴は大きく3つ。一つ目は「信頼できる支援先を選ぶことができること」。そもそも本プログラムに掲載されている支援先は、動物関連団体への活動支援を行っている『公益社団法人アニマル・ドネーション』などが、活動実績等を元に厳選なる審査を行ったうえで選定した施設のみ。さらに、各施設の様子や動物保護に対する思い、支援を募るメッセージなどを確認しながら、寄付したい施設を自分で選ぶことができる。

 二つ目は、「各施設が“今ほしいもの”を送ることができること」。それぞれの施設によって作成された「ほしい物リスト」がサイト内で一覧化されているだけでなく、その商品の使用用途も施設からのコメントとして記載されている。それらの情報を見ながら、まさに今必要とされている商品を簡単に購入することができる。

 そして三つ目が「メッセージを届けることができること」。ギフト設定をして購入すれば、贈り主の情報を施設に伝えられ、ギフトメッセージ欄にメッセージを入力することも可能。保護犬や保護猫さらには施設で働くスタッフに気持ちを伝えることもできる。※一部商品を除く。贈り主の個人情報は、各保護施設の個人情報保護方針等に従い取り扱われる。

 『Amazon』らしいシステムに専門知識を持つ団体が協力することで、誰でも手軽に、そして想いも込めて支援できる内容になっている。

各施設が作成した「ほしいものリスト」の中から、里親と出会うまでの期間に必要となる物資を選んで施設に送り届けることができる

保護犬や保護猫を迎える行動にも変化が起きている。「“可哀想な存在”を助けたい」という思いではなく、過去の生活環境などによって性格が異なる保護犬や保護猫だからこそ、自分に合ったパートナーになるかを前向きに見極めて迎えられる、つまり自分には子犬や子猫よりも保護犬、保護猫の方が合うと考える人も増えている。現在公開中の映画『駅までの道をおしえて』に出演したミノルカ(役名:ルース)を迎えた玉越博幸さんも、その一人だ。

「ミノルカと初めて会ったのは昨年4月の里親会でした。その年に16年一緒に暮らした犬が亡くなり、落ち込む私を見かねた妻が“見に行ってみようよ”と誘ってくれたのがきっかけです。実はそれまで保護犬は“怯えたり懐かなかったりと、飼うのが難しいだろうな”という印象を持っていました。ところが、そこにいたミノルカはとても堂々としていて、可愛らしい笑顔で私たちに近づいてきてくれました。目に力があり、なでてみると強い生命力を感じるコだったのです。次の里親会まで何度も家族で話し合い、私たちはミノルカを迎え入れることに決めました。とはいえ家に来てからのミノルカはご飯を少ししか食べないなど、私たちとの距離感を図っていたようなところもありました。そんなときに、映画『駅までの道をおしえて』にルース役で出演することが決まったのですが、この経験を通して、ミノルカは大きく変わりました。東京ドームほどの大きさの広々とした草原での撮影。そこで私たち家族や出演者、撮影スタッフ、ルーと思い切り遊んだことで、心の距離がグッと近づいた気がしています。
 映画の出演は私にとっても勇気づけられるものでした。撮影は犬に無理強いしない方針で進められましたが、それでも初めての場所、さまざまな人がいる場で、求められたことに応えるというのは、保護犬でなくても大変なことだったと思います。しかしミノルカはそんな我々の心配もよそに、堂々とした振る舞いを見せてくれた。保護犬は可哀相な犬なんかでは、決してありません。他の犬たちと変わらず、家族として喜びや幸せ、楽しいことを運んでくれる存在なのです」

映画『駅までの道をおしえて』に出演したミノルカ(右、役名:ルース)とルー(左)。撮影時2頭の相性がとても良かったことから、ルーも玉越さんが家族に迎え入れた

保護犬、保護猫とヒトとの新たな出会いの場を作ってくれるのは保護施設で働くスタッフたちだが、里親会で玉越さんにミノルカを譲渡した『認定NPO法人アニマルレフュージ関西』のスタッフ奥田昌寿さんは「保護犬だから引き取り手が見つかれば幸せ」ではなく「保護犬だからこそ、二度と辛い思いをさせたくない」と語る。

「私たちのシェルターでは、保護犬は里親会から実際の譲渡までさまざまなプロセスを経て、新しい飼い主さんの元へと送られます。中には“意外と面倒なので、結構です”と辞める方もいますが、ここにいるのは何かしらの理由があって、家族から離れなければいけなかった犬たち。ミスマッチで二度と辛い思いをさせたくないとの思いから、あえて時間をかけて相性をみてもらうようにしているのです。私たちは、保護犬を飼うことの一番のメリットは“相性の良さを見られること”にこそあると考えています。活発なコならお出かけ好きな家庭に、引っ込み思案なコならゆったりとした家庭環境など、それぞれの家庭に合った性格の犬を提案しマッチングすることで、互いにとって素敵な出会いになるのです。ミノルカはいいコなのですが脱走してしまうクセもあり、今まで良縁に恵まれずにいました。ところが玉越さんはこうしたミノルカのクセを理解し、慎重に対応してくださいました。そして、まさかの映画出演! 玉越さんに加えて、仔犬の頃に保護を依頼してくれた人、保護や世話、トレーニングをしたスタッフ、預かりボランティアの方など、多くの人の思いが繋がって起きた奇跡だと思い、本当に嬉しく思っています」

1番右側が『認定NPO法人アニマルレフュージ関西』卒業前のミノルカ。ワクチン接種できる年齢まで同施設で預かり保育されていた
凛とした立ち耳が印象的な現在のミノルカ

保護犬、保護猫と聞くと、ともすれば「可哀想なペット」とされがちだ。事実「人間の都合で命を失う動物を救おう」というスローガンは感情的に受け入れやすいが、しかし一方で、命を救うことはもちろん、時間や労力を惜しまず、そこから先の出会いに良縁を求めている保護施設のこと、そしてそのためには必要なものがあることも忘れてはならない。

『動物保護施設 支援プログラム』は、私たちに必要な物資を提供してくれる活動です。団体としての認知度や大きさに関わらず、きちんとした活動を行っているどうかの認定を受けた団体を対象としてくれているため、とてもフェアな印象も持っています。このプログラムが広がることで、犬や猫を支援するさまざまな団体が存在していることを一般の方に認知していただき、私たちの活動を支えていただけると嬉しいです」

『Amazon』の新たな取り組みに対して、奥田さんはその仕組みに期待を語る。 このプログラムの本質は、誠実に活動する団体の存在を知った上で、誠実だからこそ時間もお金もかかることを理解して、自分にできることを自ら選べる点にある。もちろん保護犬、保護猫を支援する方法はこれだけにとどまらないが、まずは選択肢の一つとしてサイトを覗き、情報をシェアする、利用する、コミュニケーションをとってみる……、自身のできることを、アクションにつなげるきっかけとしてみてほしい。