解けない魔法をおしえて

To:桃太郎

From:ゆうこ

13年間、家族として愛し支え合い、私に笑顔と優しさをくれた愛犬が虹の橋に行ってしまった。 頑固だけど愛嬌があって、そして少し運動神経が鈍いところも愛おしい。誰からも愛される本当に素晴らしい犬だった。 私の胸には大きな穴があき、何をしても悲しくて、日常に彼の影を見つけると涙が自然と出てくる毎日だった。ペットロスなんて言葉では言い表せない喪失感。 こんな悲しいのなら、もう二度と犬とは暮らさない。そう思っていた。 そして、それはある日突然私に起こった。 夏の向日葵のような無邪気な顔でこちらを見ているたった一枚の画像。 保護犬の里親募集の一枚だった。 「この子だ!」と私は突然夢中になった。 まるで魔法にかかったように。 悲しみにくれる私に、虹の橋から弟分の存在を教えてくれたのだろうか? 夢のような速さで彼は私達の家族になった。 茶色くて少し臆病。いつもちょっぴり困った顔をしていた痩せっぽちの彼は、私達と出会い、日に日に逞しく家族を支える立派な成犬に成長した。多分ちょっとだけシェパード、でも尻尾は柴犬、そんな可愛らしい中型犬だ。 彼がやって来てから、私の世界に色が戻り、空は青く見えた。 風は季節の香りを連れて来て、街中に季節の花がひっそりと咲いている事を知った。 まるで魔法のように私の周りの景色がガラリと変わった。 大怪我をして不自由な体で退院した時も私の心を支え、ゆっくりしか歩けないリハビリにずっと付き合ってくれたのも彼だ。 そして完全に快復をし、思いっきり走る事が出来たとき、一緒にマラソン大会に出場した。 結果はブービー賞だったが、楽しそうに一緒に走る彼の笑顔が私のご褒美となった。 なんて事だろう。もう私の人生に無くてはならない存在なのだ。 沢山の旅に出る。雪山を歩き、星を眺め、海辺を裸足で歩き、そして一緒に眠る。 私が悲しい時は走って来ては飛びつき、私の悲しみが癒えるまでそっと側に寄り添い慰めてくれる。 楽しい時も悲しい時もいつも私に寄り添ってくれる。 まるで魔法のように、私は最高の相棒を見つけたのだ。 彼にとっても私達は最高の家族だろうか? そんな私に「当たり前だよ」って顔で、彼は今日も私を散歩に誘う。 ずっとこのまま一緒に過ごしたい。ずっと。ずっと。ずっと。 2頭の犬が私に起こした奇跡のような幸せの時間。 解けない魔法をおしえて欲しい。