親愛なるテディ様。

To:テディ

From:しらゆり

きみと出会った日のことを今でもはっきり覚えてるよ。あの時私は中学生。新聞の隅に書かれた、里親探し会の記事。なぜだか無性に行きたくなって雨の中パパに車で連れていってもらった!いろんな猫ちゃんワンちゃんがいて、きみはサークルの中で兄弟たちと遊んでいたよね。何でこの子だけ毛がふわふわなんだろう!可愛い!生まれつき癖毛の女の子。ひときわ目立っていたきみに私は心を奪われたよ。名前はすぐに決まった。子ぐまみたいな見た目だったから、テディベアからとって「テディ」。帰りの車は慣れない移動でぐったり…抱っこしてた私に向かって吐いちゃったね。その時パパは何よりもまず車が無事か心配してたんだよ!今となっては笑い話だけどね。 私はきみとの散歩が大好き。「さんぽ」って言うとすぐにわかって、キラキラした顔で早く行こうよ!ってこっちを見る。きみも散歩が大好きだったね。きみとの散歩の何が好きって、ただ何気なく歩いているときに「テディ」って呼ぶと笑って振り返ってくれるでしょう?あの時の顔がたまらなく可愛くて大好きなんだよ。 だんだん年を取ってきて、歩くのもゆっくりになってきて…私からすればあの日の可愛い姿のまま見えていたけど、もうとっくにおばあちゃんになっていたんだね。あれは私の結婚式の前だったかな。突然倒れたって聞いてびっくりした。その日からてんかん発作を起こすようになって、だんだん体も弱ってきてしまったね。私の結婚式の日にはお留守番をさせるのが本当に心配で、心苦しかった。寂しかったよね。ごめんね。それから私は遠くに引っ越してしまって、なかなか会えなくなった。歩くのも大変になってきたとか、今日また発作があったとかいう話を聞いては心配で仕方なかったよ。やっと会えたお盆休み!久しぶりに会ったきみは話に聞いていたより元気そうに見えて安心した。歩くのは苦しそうだけど、それよりも会えて嬉しい!っていう気持ちが伝わってきた。いつもと全然違うとママが言った。あれ?久しぶりだから無理してくれたのかな…。そのあと1ヶ月もたたないうちにきみは旅立ってしまった。最初に会った瞬間はあんなにはっきり覚えているのに、最後に会った瞬間は思い出せないのは何でだろう?また会いたいよ。そのふわふわの毛を抱きしめたい。大好きだよ、テディ。 私ね、今年赤ちゃん産んだよ。可愛い女の子だよ。テディ、いつか生まれ変わってまた私と会おうね。