共に生きる穏やかな日々

To:チャイ

From:小坂千香

5年前、先住犬が亡くなってから2年が過ぎた頃、夫婦だけの暮らしに寂しさを感じ、また犬を飼いたいと思ったのでした。 今度飼うのなら保護犬を迎えたいという思いがあったので、保護犬レスキュー団体のシェルターに相談に行きました。 そして我が家に来たのがミックスで成犬のチャイです。 チャイは、一人暮らしのおばあさんが病気になり県の保護センターに持ち込まれた犬だそうです。殺処分寸前で保護団体によって引き出された犬でした。 忘れもしません、我が家にチャイが来た初日のこと。 連れてきた保護団体のボランティアさんが帰ったあと、ずっと吠え続け、パニックになったように家の中を走り回り、外に逃げようと窓にぶつかり、それが翌朝までおさまらなかったのです。 翌朝ようやく吠えるのはおさまり、落ち着いたかに見えたのでリードを2重にして散歩に出ました。匂いを嗅ぎ回り、落ち着かない様子でシェルターのある方向に行こうとしました。2日間ウンチもしませんでした。 「保護犬が慣れることがこんなに大変だなんて!」初めての経験でした。 来たときから物によくぶつかりました。散歩に出れば柱や木に、家の中では階段から落ちたり。目が悪いようです。そしててんかんを起こすこともありました。 チャイが来て1年が経った時、千葉に転居することになりました。 借家に住むことになったのですが、犬猫はお断りの物件ばかり。ようやく見つけた家はボロボロの古い1軒屋でした。 ご近所さんに「こんな大きな犬(中型犬)を家の中で飼ってるんですか?」と驚かれました。千葉の住んでいるあたりは外飼いがほとんどでした。 チャイは再びの新しい環境に慣れず、そのうちてんかんを毎日のように起こすようになってしまった頃、神奈川の家に戻ることになりました。 現在てんかんは薬で抑えられていますが、目は失明しました。 でも転居前に住んでいた家の家具の配置も完璧に覚えていて何も問題ありません。お散歩もコースを覚えています。 知っているコースだと時々走るのも楽しみます。 臆病で全盲のチャイには無理をさせません。近くにあるドッグランも前を通るだけ。ゆっくりまったりした生活を私達と共に楽しんでいます。 幼少期の数年をセンターで過ごし、我が家に来て全盲になったチャイですが、今を大切に。私達と一緒に歳を重ねていきながら、共に穏やかな日々を過ごしています。