アルバムをめくると・・・

To:ポレポレ

From:工藤吉徳

アルバムをめくると、写真の中の君は本当によく笑っています。  公園で友達と一緒にいる時も、かくれんぼで隠れた木の陰から顔をのぞかせた時も、初めて雪の上を歩いた時も、初めて海を泳いだ時も、朝出かける僕とバイバイする時も、お母さんとオモチャをひっぱりっこしてる時も、サンタクロースの帽子を被せられた時も、もちろん食いしん坊の君のことだから、大好きなご飯やおやつを前にしている時も。  そして、特発性筋炎という原因不明の病気で歩くことが難しくなり、カートで散歩に行く時も、いよいよ歩けなくなって車椅子に乗っている時も、布団の上で横になって猫にお腹をふみふみされている時も、病気が食道に及んで食べ物を胃に送る事が難しくなり、食後30分から1時間は立て抱っこをされている時も、やっぱり君は笑っているのです。  初めて会った時、ペットショップのゲージの中で生後7ヶ月の君は、身動きもしないで枯れ枝のような手足に虚ろな目で、こちらではないどこか遠くを見ていましたね。  あの時、君は何を見ていたのですか?ゲージの中の何ヶ月かの間、君は何を思ってあの四角い箱の中にいたのですか?全てを諦めたようなあの瞳を思い出すと今でも胸が痛むのです。君の絶望の深さと長さ。自分を含めた人の理不尽と醜さに・・・・・。  発病して8年、寝たきりになって7年、チアノーゼが出るのではないかと思う程の発作に片時も目を離せなくなって2年、酸素吸入器が必要になり、あまりの苦しそうな様子に「もう無理に頑張らなくてていいよ。」と語りかけるようになって3ヶ月。  14才と3ヶ月。 僕とお母さんのお休みの日に、はかるように二人の腕の中で息を引きとりましたね。  でも君は生まれてきて良かったと思っていてくれてるよね。僕らに会えて良かったと思っていてくれてるよね。写真の笑顔と最後の穏やかな顔が、その答えだと思っていいよね。  君の笑顔の写真を飾った骨壷を撫でながら、僕は毎日話しかけます。 「ポレ大好き!!」「ポレ家に来てくれて有難う!!」  君は、今でも僕らと一緒だから・・・・・。  撫でおりし 犬に撫でられており 彼岸花