【要望書】動物の愛護及び管理に関する法律の改正について_外飼いの規制
2024.09.18
要望書
2024年9月17日
犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟 御中
事務局長 福島みずほ 殿
公益社団法人アニマル・ドネーション(AWGsチーム)
日本の外飼い犬の数は推定93万頭。*1 *2推定値
劣悪な環境で過ごす犬の環境改善のために動物愛護管理法の改正を要望します。
日本では未だ多くの犬が屋外で飼育され、その数は全体の11%である約93万頭に上ると推定できます。外飼い犬の全てが劣悪な環境で飼われているわけではないですが、繋がれた犬を目撃した人の数・ネット上に投稿される外飼い犬虐待相談などの多さを思い起こせば、その数は少なくないでしょう。
現在、動物愛護管理法では曖昧な表現で虐待とされている一般家庭での外飼いについて、明確な数値をもって虐待と認定し、その数を減らすべく、公益社団法人アニマル・ドネーションは、動物愛護管理法での数値規制を要望いたします。あわせて署名を提出いたします。
要望:犬を感受性ある生き物として尊重し、動物愛護管理法へ「犬の外飼い数値基準(繋ぎっぱなしの基準)」の導入を
現在施行されている動物愛護管理法では、家庭動物等の飼養及び保管に関する基準において、「動物の健康及び安全を保持しつつ、その生態、習性及び生理を理解し、愛情をもって家庭動物等を取り扱う」*3という記載はありますが、犬の外飼いに対する具体的数値はありません。また、動物取扱業に関する条項にも、「その品種、習性等に応じた適切な温度・湿度の維持等の環境管理が必要である」*4としながらも、外飼いについては具体的数値規制はありません。
昨今の気温変化に伴い、夏の暑さや冬の寒さにおいて、年々屋外だけで犬を飼っていることでの犬への負担は上がっており、繋ぎっぱなしの虐待が散見される状況が引き起こされています。そこで、一般家庭、動物取扱業者共に、「犬の外飼いの数値基準」を明記するべきです。
具体的数値として以下を要望します。この数値は後に記述する海外事例も参考にし設定しました。
①外飼いの時間
・繋いでおくのは日中の6時間以内とする
・夜間は外飼いを禁止する
②外飼いを禁止する天候基準
・気象注意報または警報が発令された場合
・極度の暑さ(30度以上)、極度の寒さ(0度以下)、風、雨、雪、または雹)
・上記に該当しない場合でも、その品種、習性等に応じて判断する
現状:現在の動物愛護管理法では、一般家庭・取扱業者の「繋ぎっぱなし」を法律で明確に罰することができていません
残念ながら、今の日本の法律では、一般家庭の繋ぎっぱなし・狭い犬小屋飼育といった行為だけで、飼い主を取り締まることが難しいのが現状です。その証拠に、報道されるニュースは、長年劣悪な状況に置かれ、皮膚病や餓死などに至ってしまったケースばかりです。つまり、すぐに衰弱や死につながるものではない、じわじわと日々犬を苦しめる行為を「虐待」として訴えることが実質的にはできていないのです。
虐待に関連する法律には、動物愛護管理法として、「動物愛護法44条2」があります。この法律に基づき、H22年環境省発表の「飼育改善指導が必要な例(虐待に該当する可能性、あるいは放置すれば虐待に該当する可能性があると考えられる例) 」*5では、一般家庭においては、以下のような飼い方が意図的な虐待・ネグレクトに該当する可能性があるとしています(一部を抜粋して記載)
●(繋ぎっぱなしで散歩にも連れて行かず)犬の糞が犬の周りに何日分もたまり、糞尿の悪臭がする(写真提供:NPO法人 一匹でも犬・ねこを救う会)
● 外飼いで鎖につながれるなど行動が制限され、かつ寒暑風雨雪等の厳しい天候から身を守る場所が確保できない様な状況で飼育されている(写真提供:NPO法人 一匹でも犬・ねこを救う会)
また、この他にも虐待に該当する可能性、あるいは放置すれば虐待に該当する可能性があると考えられる実際の事例が挙げられます。
● 外飼い・繋ぎっぱなしからレスキューされた直後の犬達。劣悪な環境で皮膚がただれてしまっている(写真提供:NPO法人 一匹でも犬・ねこを救う会)
● 冬の寒さにより最悪の場合は凍死してしまう。
寒い地域では犬の外飼いも同様(写真提供:NPO法人 ツキネコ北海道)
このような行為が虐待に値する可能性があるとしながらも、平成25 年から平成30年までに新聞報道された動物の虐待事例(環境省発表)*6を見ると、多頭飼育や飼育放棄の末に衰弱、あるいは、死亡させたケースが並び、精神面や軽度な肉体的苦痛のケースは見当たりませんでした。
例えば、「清掃や汚物処理を十分に行わず、悪臭が立ち込める場所で飼育し犬を皮膚病に感染させた」という病気に至ったケースはありますが、「外で飼っている」「ずっと繋がれている」といったケースは確認できませんでした。
アニドネでは「繋ぎっぱなしはどこまでが虐待なのか」に対し、数値的な基準が設けられていないことが、要因のひとつと考えています。先述のH22環境省発表の「飼育改善指導が必要な例」*2を見ると、「繋ぎっぱなし」、「短いリード」といった、主観的・曖昧な表現が並んでいます。これを読むだけでは、「繋ぎっぱなし」とは、何時間のことなのかは不明です。
人の価値観は様々です。2-3時間でも犬の繋ぎっぱなしは気の毒だという人もいれば、連続して何日も犬を繋いでおくことを厭わない人もいます。そのため、例えば、「繋ぎっぱなしとは何時間連続で繋ぐことである」という数値基準を設けなければ、繋ぎっぱなし行為を訴えることが難しいのです。
犬が多くの時間を過ごす一般家庭においても、動物愛護の観点から問題視されることの多い「外飼い」に対して数値規制を導入すべきと考えます。
犬への悪影響:繋ぎっぱなしは、明確な虐待行為である
日本の現状を踏まえて、繋ぎっぱなしなどの行為がなぜ「虐待」といえるのかについて、私たちの見解をお伝えします。私たちは、科学的な見地に基づいても、「犬に人との触れ合いを持たせない行為」は、犬の精神障害である「分離不安」という症状を引き起こす可能性が高まること、また、万全な安全対策・衛生管理をとらない外飼いは犬の短命につながることから、「屋外での繋ぎっぱなし」を「虐待」とみなすべきだと考えています。
➀孤独がもたらす分離不安による異常行動
「分離不安」は、犬が飼主から離れることで引き起こされる不安関連障害として長く認識されています。飼い主が不在になると、犬は下痢や嘔吐といった体調の変化や、モノを壊したり鳴き続けたりといった問題行動を起こします。
②外飼いの短命リスク要因の多さ
病気リスク
● ノミやダニ、蚊といった寄生虫に晒されることが多く、それに伴う感染症のリスクが高まります。
● 極度な暑さ・寒さにさらされ、熱中症や凍死リスクが高まります。
● 室内飼いと比べ、雨や土や泥、自らの排尿、便、抜け毛などで体が汚れやすく、不衛生な生活で皮膚病などのリスクが高まります。
事故リスク
● 犬が敷地内から脱走してしまう恐れが高まります。厳重にフェンスで囲うなど脱走できないような工夫をしていても、家飼いに比べると脱走による交通事故リスクは高まります。
● 通行人との距離が近い為、悪意を持った人のいたずらや盗難リスクが高まります。
海外法の事例:海外では家庭犬の飼い方に数値基準を設けている国もある
①アメリカ *7
繋ぎっぱなし
アメリカでの繋ぎっぱなしの定義は、人がロープ、綱、鎖で犬を静止した物体に繋ぐこととされています。2022年には23の州とコロンビア特別区で犬の繋ぎっぱなしに関する法律が制定されています。
・カリフォルニア州
「一時的な作業を完了するために必要な時間を超えて」繋ぐことを禁止(原則禁止)
・ネバダ州
14時間以内に限定
・オレゴン州
10時間以内に限定
・マサチューセッツ州
5時間以内に限定
天候に基づく規制
・ペンシルバニア州
気温が華氏 90 度(摂氏32度)以上または華氏 32 度(摂氏0度)以下のときに犬を 30 分以上つなぐと、ネグレクトとみなされる
・コネチカット州
当局から気象注意報または警報が発令された場合、または屋外の状況 (極度の暑さ、寒さ、風、雨、雪、または雹) が特定の犬の健康または安全に悪影響を与える場合、つなぐ時間は 15 分を超えてはいけない
・マサチューセッツ州
犬を所有または飼育する者は、24時間のうち5時間を超えて犬を鎖でつないだり、午後10時から午前6時まで屋外につないだりしてはならない。午後10時から午前6時までの間でも、つないでいる時間が15分以内であり、犬が飼い主、保護者または飼育者によって放置されていない場合を除く。
・ルイジアナ州
指定された緊急エリアで犬や猫を極端な天候にさらすような方法でつなぐことは禁止
※法律のない州は、ネグレクトや虐待として罰せられる可能性がある(現在の日本と同様)
※州だけでなく多くの市や郡でも独自の条例等を施行している
②スイス *8
日中5時間は自由に動くことができなければならない
それ以外の時間帯は、鎖につながれた状態で20m2以上の広さを移動できなければならない。引き首輪で繋がれてはならない
スイス動物保護規則 URL
③カナダ オンタリオ州法 *9
・24時間のうち23時間屋外に繋がれている犬は、運動の時間を与えるために、少なくとも連続60分間は繋がれている紐を外さなければならない。
・病気や怪我をした犬は繋ぎっぱなしを禁止
カナダオンタリオ州法 州動物福祉サービス法 URL
出典/参考数値一覧:
日本の外飼い頭数計算式:
全国ネット調査によると日本には外飼いの犬が約11%存在(ペット相談サービスMOFFMEによるインターネット調査、2021年1)。犬の合計飼育数が約849万頭(ペットフード協会による全国犬猫飼育実態調査、2020年2)なので、849万×11%で、約93万頭が外飼いと推定
*1 ペットフード協会調査 全国の犬の飼育件数(日本、2020)URL
*2 MOFFMEネット調査 ペットの飼育場所(日本、2021)URL
*3 家庭動物等の飼養及び保管に関する基準 URL
*4 環境省 動物の飼養又は保管をする環境の管理に関する事項 URL
*5 環境省公表 飼育改善指導が必要な例(日本、2010)URL
*6 環境省公表 新聞報道された動物の虐待等の事例(日本、2018)URL
*7 23州・DCの繋ぎ飼いに関する規定(アメリカ、2020) URL
*8 スイス動物保護規則 URL
*9 カナダオンタリオ州法 州動物福祉サービス法 URL
このテーマのゴール
ゴール 4
いつもあなたと一緒に
飼い主にべったり…犬の人への強い愛着は、歴史的に築いてきた深い絆からも説明できます。飼い主から放置されると、犬は心理的に大きなダメ―ジを受けます。犬の孤独な時間を1秒でも減らすために、私たちができることから始めましょう。