活動レポート
「かわいい」の裏に隠されたスコティッシュフォールド問題
2025.10.27
独特の折れた耳(垂れ耳)が特徴的なスコティッシュフォールド。日本で最も人気な猫種(1)ですが、かわいい外見が重要視されるがゆえに、実は健康面において様々な問題を抱えているのです。
今回はスコティッシュフォールドにどんな問題が隠されているのか考えていきましょう。
スコティッシュフォールドとはどんな猫なのか?
スコティッシュフォールドは、元々は1961年にスコットランドで発見された垂れ耳の野良猫がはじまりとされています。
大きくて丸い目と頭、丸みをおびた体型に短い足、長めのしっぽ、独特の折れた耳が特徴です。また、まるで人間が椅子に座るように腰をかける、いわゆる「スコ座り」が可愛いと言われております。
なぜ問題視されているのか?

ただし、このような可愛い外見は、健康を犠牲にしたものなのです。にもかかわらず、ペットとして人気があるという理由で、人間が意図的にそのような外見になるよう繁殖しているのです。
具体的にどのような問題があるのか見ていきましょう。
1.折れ耳のスコティッシュは、骨軟骨異形成症という遺伝性疾患を抱えている
耳が折れる原因は軟骨異形成という遺伝性の病気によるものなのです。耳以外の症状では手首や足首に骨瘤ができる、痛みを覚える、歩き方がぎこちなくなったり、引きずるようになるなどの症状があります。先ほどの「スコ座り」も、通常の猫の座り方では痛みを感じたり、体に負担があるため、関節にかける負担が軽減されるよう猫側が工夫しているものと考えられています。
2.耳が折れているため、外耳炎にもなりやすい
折れ耳のスコティッシュフォールドは、耳が折れているので通気性が悪く、雑菌が繁殖しやすい状態にあります。よって、耳の皮膚に炎症が起こる外耳炎など耳の病気を引き起こしやすくなります。
3.日本では、あえて折れ耳のスコティッシュを産ませている
実は、スコティッシュフォールドの全てが折れ耳になるわけではありません。立ち耳になる確率は約70%、折れ耳になる確率は約30%と、むしろ立ち耳になる確率の方が高いのです。立ち耳のスコティッシュフォールドは、耳が折れる軟骨異形成の遺伝子を持たずに生まれるため、軟骨異形成症になる確率は低いと言われております。
そして、折れ耳のスコティッシュフォールドは、ペットとして人気ゆえに、人間が意図的に折れ耳のスコティッシュフォールド同士を交配させることで、産み出しているのです。
これがスコティッシュフォールドが、かわいそう、問題であると言われる理由です。
実際スコティッシュフォールドは健康上問題を抱えやすいのか?
実際にスコティッシュフォールドは健康上問題を抱えやすいのでしょうか?
アニコム損害保険の保険金支払い実績を見てみましょう。
歩行異常/跛行/四肢の痛み、関節炎を発症いやすい
保険金支払い情報をみると、スコティッシュフォールドは他の猫に比べて、歩行異常/跛行/四肢の痛みの有病倍率が1.6倍、関節炎が2.3倍という結果になっております(2)。
外耳炎も発症しやすい
また、外耳炎においても有病倍率が1.5倍という結果になっております(3)。
やはり、折れ耳のスコティッシュフォールドは実際に病気を発症しやすいことが分かりますね。
海外各国ではどのように規制されているのか?
日本では繁殖・販売が認められている折れ耳のスコティッシュフォールドですが、海外各国ではどのような規制が設けられているか見ていきましょう。

オランダ
オランダでは、スコティッシュフォールドなどの折れ耳の猫の繁殖は禁止されております。動物飼育例第 3.4 条の違反になるとされています(4)。
ベルギー
ベルギーのフランドル地方では、2021年10月1日より、スコティッシュフォールドなどの折れ耳の猫の繁殖と販売が禁止されました(5)。
オーストリア
オーストリアでは、2020年に、スコティッシュフォールドの繁殖が禁止されました。オーストリア動物福祉法は、残酷な繁殖や、不適切な飼育条件に当てはまる動物の輸入、購入、仲介、譲渡、展示を禁止しています(6)。
獣医師のインタビューコメント
過去アニドネメンバーがインタビューを行った獣医師からも、折れ耳のスコティッシュフォールドについて問題視する発言もありました。
「私が過去に関節のレントゲンを撮った折れ耳のスコティッシュは、すべてがこの疾患を持っていました。折れ耳のスコティッシュフォールドは、かわいい外見が重要視されるがゆえに、生きていく上で不利な形を持って生まれてくる猫なのです。」(7)
おわりに
皆さんいかがでしょうか?スコティッシュフォールドが「かわいい」というのは分かります。しかし、その裏側では、健康上の問題を抱え、苦しんでいます。
消費者が欲しがるから、ペットショップが求め、ブリーダーが繁殖する、そして動物が苦しむ。この構造は長年変わらないペット業界の大きな問題点です。
まずは、我々消費者が正しい情報をもとに正しい選択をする。それが世の中の動物たちを救うことになると思っております。
出典:
1) アニコム損害保険株式会社.猫と暮らしの大百科.【2024年最新版】猫の名前&人気猫種ランキング!
2) アニコム損害保険株式会社.傷病統計.どうぶつ診療費
3) アニコム損害保険株式会社.傷病統計.どうぶつ診療費
4) NVWA.Fokken met uw hond of kat
5) ベルギーフランダース州.Verbod op de kweek en het verhandelen van fold katten
6) Tierschutz Ombudsstelle Wine.Scottish Fold-Katzen sind Qualzucht
7) 公益社団法アニマル・ドネーション.動物の専門家インタビュー.犬猫のブリーディングを行っているのは人間。だから人間が遺伝性疾患を減らせるはず
このテーマのゴール
ゴール 11
健やかな一生を
目の前にいる可愛い子犬・子猫が、どこで、どのように生まれたのか、思いを馳せてみましょう。親元から離され、長距離輸送により精神疾患を病んだり、遺伝子疾患などの健康問題を抱えた子が存在しています。多くの犬猫が健康体で人生のスタートを切れるようにするための方法を考えていきます。