
「動物介在活動」第4回 犯罪被害を受けた子どもに証言する勇気を与える付添犬
2022.02.05

コートハウスファシリティドッグ
アメリカには、コートハウスファシリティドッグという役割をする犬がいます。虐待や性被害にあった子どもは、司法関係者の前で被害状況などを証言したり、司法面接で話をしたりする必要があります。被害に合った子どもが安心して話ができるよう、精神的な負担を軽減するために手助けをする犬のことで、法廷に付き添うために特別な訓練を受けています。

日本でも、2014年から児童精神科医、弁護士、獣医師、研究者の方が中心となり、アメリカのCourthouse Dogs® Foundation(コートハウス・ファシリティ・ドッグの普及啓発を行う組織)と連携しながら、日本の現状に合ったコートハウス・ファシリティ・ドッグを付添犬と名付け、付添犬制度の確立を目指し活動を進めてきました。
2020年には、虐待を受けた子どもが裁判で証言する際に、精神的な負担を和らげることを目的に日本で初めて「付添犬」の法廷への同伴が許可されたことがトップニュースとしても掲載されました。
「付添犬」と言うキーワードがツイッターのトレンドにもなるなど大きな話題を呼びました。
この時虐待を受けた子どもに付き添ったのが、日本介助犬協会が育成し付添犬として認定を受けたゴールデンレトリバーのハッシュです。アニドネは当時ハッシュと訓練士の桑原さんを取材しています
(取材https://www.animaldonation.org/blog/group_report/17639/))
付添犬のハッシュ

桑原:「弁護士さんから伺った話です。被害に合った子どもはただでさえ大きなショックを受けています。そんな中さらに司法の場という特殊な場所で自身の辛い体験について詳しく話さないといけないことは、精神的にも大きなストレスがかかります。また自分の証言により裁判の結果が変わるかも知れないというプレッシャーや、伝えたい言葉をきちんと話せるのかという緊張感でいっぱいになります。そんな時にふと足元を見た時に、犬が寝そべっている。それは子どもにとって非常に大きな力になるとおっしゃっていました。」
裁判所などの特殊な場所や環境であってもハンドラーの指示に従い、いつもと変わらず普段通り過ごせるようなトレーニングをつんでいる付添犬ですが、裁判当日も被害者である子どもの足元にそっと寄り添ったそうです。
桑原:「ハッシュはただお子さんの足元によりそっていました。どこでも普段通りリラックスしてくれるのが特技ですが、当日もお子さんの足元でぐっすり寝はじめて。時々手足をバタバタさせたり寝言を言ったんです。裁判は大人でも緊張してしまうような緊迫した空気が流れていましたが、そんな特殊な雰囲気の中でもいつも通りリラックスして行動するハッシュがいるだけで張り詰めている空気がふっと柔らかくなっていくのが分かりました。」
水上:「ただその場にいるだけなのに、子どもに勇気を与える犬の力はすごいですね。司法面接(虐待などの被害を受けた疑いのある子どもから、できるだけ正確な情報を、できるだけ負担なく聴取する面接のこと)の場に付添犬を同行させた時のことです。お子さんは、面接を受けたくないと嫌がっていました。しばらく犬と触れ合った後に、面接が終わってもワンちゃんが待ってるよというと、『本当にワンちゃんが待っていてくれるの?!』と喜んで自ら犬のぬいぐるみを手にして面接に向かいました。」
このテーマのゴール

ゴール 3
秘めた能力を解放させよう
人を支える犬がいます。近年は、研究の成果、動物との触れ合いが、人の心を癒したり痛みを緩和する効果を持つことが分かってきました。人に寄り添って心を癒すことを仕事とする犬猫の活躍の場を広げていきます。犬に過度な負担をさせないのが原則だと考えています。