誰かが捨てた命

To:ジェスロゲイト

From:ゆき

うちの子になったのは去年の1月16日。 一昨年の12月、寒い公園で保護されたそうだ。 全長40cmほどの小さな身体。手足も細くて小枝のよう。 こんな小さな子、冬に体温を奪われ死んでしまってもおかしくないのに…。 その子はすくすく育って1年で1mを超えた。 一丁前に発情期を迎え、毎日オラオラと攻撃的な態度を見せる。 そんな姿を見ると、正常な成長をしてるんだなぁ〜と嬉しくなる。 この子の前に保護団体から迎えた子は、腎臓疾患があって正常に成長できなかったから。 毎日お薬を飲ませ、流動食を食べさせ、毎週病院に通って注射や点滴。入院も2回した。 一緒にいられた時間は短かったけど本当に濃密だった。 その子がいなくなってしまってからは、必要な事だけを淡々とこなすだけの色を失った時間が流れていった。 1年近く経った頃、里親募集されているこの子を見つけた。 何度も何度も考え、悩み、また考え、1か月ほどしてから心臓をバクバクさせながら電話をかけた。 「私を里親として考えていただけませんか?」 この子はグリーンイグアナ。 ベビーの頃は30cm足らずで売られているが、成長すると1.5m以上になる。 爬虫類の中でもかなり賢く、名前やトイレも覚える。そして脱走の名人。 雄は発情期には攻撃的になり、咬まれて数針縫った人も少なくない。 なのに数千円で売られている。 「手が掛かる」「大きくなった」「攻撃的で怖い」などの理由で捨てられてしまう安い命。 うっかり逃してしまっても探されない値段の命。 うちにおいで。 ずっと一緒に暮らそうね。 誰かが捨てた命でも、私にとっては大切な命。 お互いにいい同居人になろうね。 そしてヨボヨボのおじいちゃんになった姿を見せて。