一緒に暮らそう

To:薄茶

From:クックロビン

昨年の春、我が家の庭でご飯を食べている地域猫を遠くからキミは見ていたね。突然現れたクリーム色の薄い茶トラの男の子。近寄ると逃げてしまい、カリカリを置いてあげたら人の気配がなくなってから食べていたね。 それなのに10日もしないうちに、玄関ドアが開く音ですっとんできて足元にスリスリ·お腹見せゴロンの猫になったキミ。玄関を開ける度にご飯をおねだりするから、ガリガリだった身体もあっという間に大きくなって行き、梅雨どきは温室棚の中で雨をしのぎ、夏場は植え込みの木陰で涼をとり、冬は段ボールハウスに迷いもなく入居していたね。でもネズミのお家賃はいらなかったかなぁ。 春の盛りが来る前に去勢手術を···と家人と話していた矢先、度々大きな喧嘩傷を作ってくるようになり、年末に3度目の怪我でぐったりしていた所を保護して、通院して、そのまま家に迎えることを決意したけど、キミにとっては迷惑な決意だったかな? ウーシャーもないし、パンチもない。 トイレも一発で合格したし、ちょっとマーキングはしちゃったけど去勢後は大丈夫だし、家猫の素質はバッチリなんだけど、キミはお外に出たかったんだよね。 1日中鳴いて泣いて、疲れて寝て、起きては鳴いて声も枯れて··· 1ヶ月が過ぎ、2ヶ月が過ぎ、3ヶ月目になるとさすがに心折れそうな毎日だったけど、私もがんばった、キミもがんばった。3ヶ月が過ぎる頃、気が付けばあまり鳴かなくなったね。おもちゃでも遊ぶようになったし、床や爪研ぎの上でしか寝なかったのがハンモックで寛ぐようになった。 ここがキミのお家だよ。 外の世界ほど広くはないけど、走り回れる広さはあるよ。窓を開ければ鳥のさえずりや車の音も聞こえるし、色んな匂いや気配を感じることが出来るよ。 暑さ寒さに耐えることもない、餓えや渇きに苦しむこともない。追いやられることも事故の心配もない。お外暮らしの自由はないけど、安心と安全がここにはあるよ。 そして、家族みんながキミを愛しいと思っているよ。 だから一緒に暮らそう、これからずっと。