しっぽと引き換えに
To:ミリ
From:いぶ

2年前の初夏、以前から仲良くしていた黒いオス猫が突然子猫を連れてきました。 まだ若いオス猫は不器用ながらも子猫を見守り世話をしていました。 まだ2ヶ月にもなっていないような子猫。 やせ細っていて、子猫ながら苦労して育ったのでしょう。 しかしうちには2匹の元保護猫がいて、これ以上増やさないと決めていたので、この子猫は外猫として見守ろうと思っていました。 しかし数日後、長くてきれいだったしっぽの先が垂れ下がり、元気に走り回ってはいるけれどしっぽの先を引きずるようになっていました。 気にはなりましたがまだ子猫には触れません。 それからしばらくして、やっと抱っこができるようになって確認してみると、しっぽの先が壊死していました。 このままではいけない。 獣医さんに電話をして連れて行く準備をしていると、壊死したしっぽがぽろりと取れていました。 子猫は元気そのものでしたが、断面は骨も見えていたので、きれいにふさがるように獣医さんに手当てしてもらいました。 それからは毎日薬をつけてあげましたが、外の生活ではカラーもつけられず、舐めてしまうので、一向に傷が塞がりません。 うちの猫は2匹だけ、と決めていたけれど、家族と話し合いを重ね、子猫をうちの子として迎え入れることにしました。 うちの2匹は窓越しに子猫とはすでに知り合っていたので、威嚇することもなくすんなりと受け入れてくれました。 今では傷はきれいに治り、毛も生えています。 しっぽは半分になってしまったけれど、そのおかげでうちの末っ子になることができました。 ちなみに、子猫のミリを連れてきたオス猫は今もよく庭に遊びにきます。 そのオス猫が来ると、飛んでいってクンクンと挨拶をします。 猫は3年の恩を3日で忘れるなどと言いますが、ミリはオス猫への1ヶ月の恩をそろそろ2年になる今も覚えているようです。