これまでも、これかも。
To:ふぅ
From:SHOKO

初めて会った時、鈴の音の様な可愛い声で私を呼び止めた。白い長毛のネコは、実習先の供血猫だった。 「かわいい!!」 「気に入ったのならあげるよ。」 確かそんな軽いノリでもらってしまった(笑)。 当時獣医大5年生だった私は、下宿でこっそり飼うことに。 かわいいのはほんの2~3日。実際はキッツイ性格のおネコ様。 「あげるよ。」の軽いノリは、キツくて扱いにくいネコだったからだ。 気に食わなければ咬んで来る。 シャーシャー全力で暴れまくる。 お陰様で、シャー猫扱いに鍛えられた。何度流血惨事になったことか。。。 それでも、長毛のイケメン。いるだけでかわいい。 完全なる下僕。猫に敬語。 つかず離れずの距離で、視界のどこかしらに必ず白い塊があるのが私の中では当然だった。 寂しい時も、苦しい時も、悔しい思いをした時も、風邪ひいて高熱出した時も、傍らにはふぅちゃんがいた。 結婚して、家族が増えても、傍らにはあなたがいた。 仕事と子育てとのハザマでもがき苦しみ悩んでいる時も、傍らにはあなたがいた。 念願の開院が近くなり、病院名をどうするか…幾つか候補はあったけど、これまでお世話になってきたふぅちゃんの名前をもらうことにした。 仕事で留守にする時間が長くても、あなたは子供達を見守ってくていた。 東日本大震災の時、いつもは物静かなのに、鳴いて子供達に異変を知らせたのはあなた。 全盛期7.5kgあった体重が、徐々に徐々に減って、腎不全となり…気づけば共に暮らして20年以上。 そこにいるのが当たり前。 治療しながらの日々となった。 大分年老いてきたけれど、プライドは天下一品。 あなたのお陰でたくさんの、本当にたくさんの大切な事を勉強させて頂きました。 これまでありがとう。 これからもありがとう。 出会った頃の可愛らしい声は、今も耳が覚えている。 あなたの柔らかい毛並みとあたたかなぬくもりは、今も手が覚えている。 大学5年の出会いのあの時から、私の人生の半分をともにし、私の人生を豊かで幸せに導いてくれた。 あなたの名前をもらった病院は、今年、11年目の春を迎えようとしています。 あなたのお陰で今の私がいる。