本当にありがとう
To:クッキー
From:ふくたん

ベランダで変な音がした。 胸騒ぎを覚えながら見に行くと、年上猫のふくちゃんが固まっていて、もう1匹子猫のクッキーの姿がない。下を覗いて心臓が止まるかと思った。クッキーが、はるか下の道路にうずくまっているのがみえたのだ。我が家はマンションの6階だ。急いで駆けつけて抱きあげたが、クッキーはおしっこを漏らしブルブルと震えていた。 近所の動物病院で『うちでは何もできません』と言われ途方にくれたが、次の病院でMRIを撮れる病院を紹介してもらうことができた。動物のMRIは麻酔をして撮影しなければならないし、その設備のある病院は少ないのだ。 予約した日に連れていき、下された診断はあごの骨折。幸い子猫で体が軽かったせいで体は大丈夫だったが、落ちた際にあごをコンクリートに強打してしまったようだ。 あごが左右に少しずれていたが、フードは食べることができた。先生に『幸いエサは食べられるし、手術をしても失敗する可能性もある。費用は40万以上かかるのでこのままにしておくという選択肢もありますがどうしますか』と言われた。高額なので旦那に電話で相談した。そうしたら『お金がかかるからって、そのまま何もしないで放っておくつもりなのか!』とひどく怒られた。 普段は猫には無頓着で撫でたことさえない人なのに。嬉しくて涙がでた。この人と結婚してよかったなとつくづく思えた。 手術は無事に成功した。入院していた1週間は片道2時間半かけて毎日面会に行った。面会しても、会えて嬉しい顔をしてくれる訳ではないのだが、家にいても何も手につかないのだ。 退院してしばらくは、手術で毛を剃られて手術跡も痛々しい姿だった。私の不注意のせいでごめんねと何度も謝った。 3箇所あるベランダは、すべて鳥避けネットを張り巡らし、少しの隙間もないように、何日もかけて落下防止対策をした。なぜもっと早く手を打たなかったのかと、悔やんでも悔やみきれない。 クッキーは有り難いことに、全く何の後遺症もなく元気に過ごしている。ふわふわの羽布団にうずまって寝るのが大好きで、爪切りと抱っこが大嫌いな可愛い子。あのとき、死なないでくれて、そして元気になってくれて本当にありがとう。そうでなければ私は一生後悔しながら生きなければならなかった。本当に本当にありがとう。 いつまでもいつまでもずっと一緒にいてね。