
動物愛護管理法に「動物は感受性のある生命存在」という記載を
2025.06.21

日本では動物が「物」扱い?
ペットと暮らす人々や、動物と深く接したことのある人々にとって、彼らが人間と同じように感受性や感情を持つことは疑いようのない事実でしょう。虐待や多頭飼育崩壊など、動物が不幸になるケースを見聞きするたびに、言葉を話さぬ彼らのことを思って胸が苦しくなる人も多いはずです。
そんなときに、
「法律上、動物は『物』だから解決が難しい」
「日本では動物が『物』扱いだから仕方がない」
などという言い訳を耳にすることはないでしょうか。
日本の法律では本当に、動物は物扱いなのでしょうか?
民法だけをみれば、答えはイエスです。
日本を含む多くの国の民法では、世界を「人」と「物」の2つに区別しています。「人」は自然人(人間)と法人を指し、「物」は形のあるもの(有体物)を指します。有体物はさらに、動産や不動産などに分類されます。
明治時代の旧民法において、動物は有体物(動産)の1つとして例示されていました1)。今の民法に動物を定義する条文はありませんが2)、旧民法の概念を引き継ぎ、現在も動物が物(動産)の1つであることは自明であるとされているのです3)。
実は日本の現在の動物愛護管理法4)には、「動物が命あるものであることにかんがみ」と始まる条文があります。すなわち厳密には、法律上、動物は単なる物とは区別されているのですが、この事実は認知度が低いのが実情です。そしてそのことが、動物を物のように扱ってもかまわないという考え方につながり、日本の動物福祉レベルの向上を妨げる一因となっている可能性があります。
動物福祉先進国では動物の「感受性」を明文化している

世界に目を向けると、特に動物福祉先進国といわれる欧州各国では、過去35年ほどで「人」と「物」という古来からの法概念が少しずつ変化してきました5)。たとえばオーストリアの現在の民法には「動物は物ではない」と記されており、ドイツ、スイス、オランダなどの民法にも同様の記載があります。
また「感受性」(あるいは感覚、知覚、意識。英語ではsentience)という単語を用いて、動物がどのような存在かを明文化している国も多くみられます。フランスでは基本法である民法において、動物を「感受性のある生命存在」と定義しています。スペインの民法と動物福祉法、オランダの動物法にもほぼ同様の条文があり、英国では2022年に、その名もAnimal Welfare (Sentience) Act [動物福祉(感覚)法]という法律が制定されました。
欧州以外でも、ニュージーランド、コロンビアなど様々な国において、民法や動物関連の法律に「感受性」という言葉が使われています(2025年4月現在)。
国際的な動物保護団体として広く知られる世界動物保護協会(WAP)は、「動物の感受性が法律で正式に認められているか?」を評価指標の1つとして、世界各国の動物福祉レベルを7段階(A~G)にランク付けしています6)。2020年の評価において、オーストリア、スイス、オランダ、英国の動物福祉レベルはB、ドイツ、スペイン、フランスはCと判定されましたが、日本のレベルはEでした。

引用元:https://api.worldanimalprotection.org/
日本の法律に動物の「感受性」を認める一文を入れよう!
日本でも欧州の一部の国のように、国の基本法である民法に「動物は物ではない」と明記できれば理想的ですが、民法の変更手続きは複雑で時間を要します。その一方で動物愛護管理法は1973年に制定されて以降、4回改正されており、今後も定期的に見直しが行われる予定となっています。
そこで、動物愛護管理法の次期改正において、動物の定義を現在の「命あるもの」から一歩進んだ「感受性を持つ生命存在」に変えたい——というのが、私たちAWGsの願いです。
現在の動物愛護管理法にあるとおり、動物が命あるものであることは当然です。それだけでなく、人と同じように感受性を持つことを法律に明記し、そのことを日本中の人々に知ってもらいたい。
そうすれば、たとえば小さなケージでの長時間移動や、劣悪な環境での飼育、虐待などを受ける動物たちの心身の苦しみを、より具体的に想像できるのではないか。また、そばにいるペットだけでなく、すべての動物たちの「感受性」に思いを馳せることができるのではないか。そして、より多くの日本人が動物をもっと大切に扱うようになり、不幸な動物たちを少しでも減らすことに繋がるのではないかと、AWGsでは考えています。
動物愛護管理法は議員立法によって制定され、改正されてきた背景があります。そして、その議員を動かすのは私たちの声です。この法律に「感受性を持つ生命存在」という文言を入れることを目指し、AWGsでは署名活動を開始します。
日本の人々の動物への認識を変え、動物福祉レベルを少しでも上げるために、ご賛同いただける方はぜひ、こちらから署名をお願いいたします。

世界各国の法律における動物の定義(AWGs調べ。2025年4月現在)
引用資料:
1)旧民法 第6条. 内閣官報局 法令全書 明治23年. 国立国会図書館デジタルコレクション URL
2)民法(明治二十九年法律第八十九号)第85条及び第86条 URL
3)竹村壮太郎. 商学討究 69 (2/3), 287-308, 2018 URL
4)動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)第二条 URL
5)Michel M. Journal of Animal Law, Ethics and One Health (LEOH), 2023;29-43. DOI:10.58590/leoh.2023.003 URL
6)世界動物保護協会(WAP)Animal Protection Index: Methodology URL
(いずれも2025年3月最終閲覧)
参考資料:
青木人志. 日本の動物法 (第2版). 一般財団法人 東京大学出版会, 2016.
李 鳴. 一般市民のための法学入門. 一般財団法人 放送大学教育振興会, 2023.
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日本の動物福祉の向上を
日本の動物福祉の向上のため、AWGsでは法制度の整備、教育へのアプローチ、地域との連携など包括的に取り組み、すべての動物が安心して暮らせる社会基盤を築くことを目指します。