
動物たちの叫びを無視しない日本に!虐待を止めるために今アクションを
2025.02.03

2019年に改正され、2020年に施行された動物愛護管理法により、動物虐待に対する罰則が強化されました。しかし、現状ではまだ十分とは言えない課題が残されていることをご存じでしょうか?
動物愛護管理法は、前の改正が施行されてから5年を目途に見直しが検討されるため、2025年は重要な見直しの機会となります。
動物愛護管理法では厳罰化が進んだ一方で、民法では動物を「所有物」としていること、刑事訴訟法において犯罪があった時の押収手続きが一時的保護する措置に留まるなど、動物虐待の即時保護という観点から、日本の法律を見ると改善が必要な点が多くあります。本記事では、動物愛護管理法の現状の課題と、より良い法改正に向けた方向性について解説します。
また、一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル様が推進する「プロジェクトSOS」では、法改正を目指した署名活動が行われています。AWGsアンバサダーに新たに就任された同団体の取り組みに、ぜひご賛同ください。
動物愛護管理法での虐待に関する表記はどんなもの?
動物愛護管理法[i]は、これまでに何度かの改正を経て現在の形になりました。その原型となる法律は、1973年に議員立法として制定された「動物の保護及び管理に関する法律」です。そして1999年には、現在の名称である「動物の愛護及び管理に関する法律」に変更されました。その後も、虐待や遺棄に関する適用範囲の拡大や罰則の強化など、より具体的な項目が追加され、法律が充実してきました。
現行法の第一条には、動物愛護管理法の目的が記されています。その中でも「動物の虐待および遺棄の防止」が最初に明記されており、法律の重要な柱となっています。また、動物が虐待を受けるおそれがある事態を都道府県が確認した場合には、必要な措置を命じたり勧告したりできること、獣医師による虐待の通報義務があること、さらに虐待行為に対しては1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることも定められています。
これだけ読むと、動物愛護管理法は動物虐待を防止するために十分な法律であるように思えるかもしれません。しかし、現実にはまだ課題が残されています。
第一条(目的) この法律は、動物の虐待及び遺棄の防止、動物の適正な取扱いその他動物の健康及び安全の保持等の動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止し、もつて人と動物の共生する社会の実現を図ることを目的とする。 |
第二十四条 四(周辺の生活環境の保全等に係る措置) 都道府県知事は、動物の飼養又は保管が適正でないことに起因して動物が衰弱する等の虐待を受けるおそれがある事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、期限を定めて、当該事態を改善するために必要な措置をとるべきことを命じ、又は勧告することができる |
第四十一条 二(獣医師による通報) 獣医師は、その業務を行うに当たり、みだりに殺されたと思われる動物の死体又はみだりに傷つけられ、若しくは虐待を受けたと思われる動物を発見したときは、遅滞なく、都道府県知事その他の関係機関に通報しなければならない。 |
第四十四条 二(罰則) 愛護動物に対し、みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、又は飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 |
動物愛護管理法があるのに動物を虐待から救えない現状

「令和4年度動物の虐待事例等調査報告書」[ii]によると動物虐待の検挙は2011年55件から、2021年には約5倍の285件と大きく増えています。一方で、起訴されたのは2011年24件から2021年には約3倍の71件となっています。前回の動物愛護管理法改正で、罰則が強化されたため、警察等への通報も増えているようです。
動物愛護管理法は、動物虐待の防止を一つの大きな目的としているにも関わらず、動物を虐待から救えない現状があるのはなぜなのでしょうか。
主な原因は3つあると考えられます。
1つ目は、動物虐待という概念の曖昧さ
「ある人から見れば虐待に該当するが、別の人から見るとそうではない」といったように、虐待の基準が不明確なため、判断が難しい状況が生まれています。動物愛護管理法第44条には、「身体に外傷が生ずるおそれのある暴行」といった定義が記載されていますが、それ以外の虐待行為については具体的な基準が示されていません。
虐待を客観的に判断できる明確な基準が設けられることで、現場で対応する担当者が迅速に動けるようになるでしょう。
2つ目は、民法における「所有権」の壁
民法では、犬や猫など人間に飼育されている動物は「動産」(物としての財産)と定義されています。そのため、虐待が通報され動物が一時的に保護されたとしても、飼い主が所有権を手放さない限り、その動物は飼い主の所有物として扱われ続けます。
仮に動物愛護管理法に基づき飼い主が有罪判決を受けたとしても、民法上の所有権は失われないため、動物を完全に保護することが難しいのが現状です。この矛盾が、動物虐待に関する法的対応をより複雑にしています。
3つ目は、執行の壁
動物愛護管理法第37条の2では、各都道府県の動物愛護センターが「動物の飼養または保管をする者に対する指導、助言、勧告、命令、報告の徴収および立入検査を行うこと」が規定されています。しかし、この条文には、虐待から保護された動物をどのように取り扱うべきか、あるいは正式に保護できるかどうかについての具体的な記載がありません。この不明確さが、現場での対応を曖昧にしている要因となっています。
解決策としての動物愛護管理法 改正案
ここまで、動物愛護管理法で定められること、抱える問題点についてお伝えしましたが、ではどうしたら良いのでしょうか。答えは、現在の課題を解決する法改正の実現です。
この章では、一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル様が署名を集める際に提案している動物愛護管理法改正案を引用します。
前段で記載した障壁を取り除けるよう、本文に要件を明記する形となっています。
1)緊急一時保護
伴侶動物との共生において、飼い主(以下、「所有者」とする。)の責務は重大である。所有者は、動物の命と福祉のために、適切な飼養が求められる。
その上で、所有者から虐待を受けた、または虐待を受けた疑いのある動物(以下、「被虐動物」とする。)の命と福祉を守るため、以下の通り、適切なタイミングでの一時保護を徹底する。
<積極的虐待(殴る蹴る、熱湯をかける等)の場合>
積極的虐待は、原則警察案件となるが、一刻の猶予も許されない状況においては、速やかな対応が必要となるため、警察だけでなく動物愛護管理センター等(以下、「行政」)の職員による一時保護も可能とする。
<消極的虐待(ネグレクト)の場合>
明確なガイドライン(期限・ゴール)を定めることとする。行政は、このガイドラインに沿って指導を行い、期限となっても改善が見られない場合には、警察と連携し一時保護を行う。
一時保護をすべきかどうかの判断が困難な場合には、有識者グループ※1に見解を求める。また、現状動物虐待に専門的な知見を持つ獣医師は限られるため、行政(動物愛護センター等)は、獣医師等職員に研修を受講させるなどし、虐待に対応ができる獣医師・職員の育成に取り組むことをあわせて明記する。
2)所有権の喪失
有罪判決の有無に関わらず、一時保護をした被虐動物にかかり、改善の余地がなく、飼養が困難であると調査および社会通念に則って判断※2された場合には、以下の通り、所有者から所有権を喪失させることを可能とする。
<所有者が有罪判決を受けた場合>
改めて立ち入り調査等を実施し、状況を確認する。改善の余地がなく動物の飼養が困難と判断※2された場合には、所有者から被虐動物の所有権を喪失させることを可能とする。
<所有者が不起訴等になった場合>
改めて立ち入り調査等を実施し、状況を確認する。改善の余地がなく動物の飼養が困難と判断※2された場合、所有者からの被虐動物の所有権を喪失させることを可能とする。
3)行政による被虐動物の保管
動物愛護管理センター等が、1)2)において保護された被虐動物の“保管”業務を行うことができるよう、動物愛護管理法 第37条の2を改正する。
保護された被虐動物を担当する地域の行政(動物愛護管理センター等)はもちろんのこと、他都市や他都道府県を含めた、全国の行政(動物愛護管理センター等)が一義的には保管義務を持つ。しかし、収容可能頭数を超えるおそれがあるなど、やむを得ない場合(特に多頭飼育崩壊等、一度に多数の動物の保護が必要となった場合)には、保管業務を獣医師会会員や民間の保護団体等に委託することを可能とする。
注記:
※1 各行政は、有識者グループを作る。専門知識および社会通念に沿った判断が必要となるため、当グループには、行政獣医師および動物虐待に専門的な知識を有する外部獣医師(地域の獣医師会が推薦する獣医師や獣医系大学の専門家など)の2名以上の獣医師に加え、民間人や弁護士等が参加する。
※2 判断にあたっては、①環境改善に関する確認、②動物の体調、そして③所有者の経済状況および(心身の)健康状態を踏まえ、有識者グループ※1が社会通念に則って方針を策定。その上でその方針に沿って動物愛護管理センター長が最終的に判断する。なお、当該判断基準については別途ガイドライン(チェックリスト)を定めることとする。
いますぐアクションを!署名のお願い

犬猫を虐待から救うため、法改正が必須であることをご理解いただけたでしょうか。
実際に法案改正をする際に、多くの声を集めることが重要です。
変えられるタイミングは、今でなければまたさらに5年後と、虐待される動物を助けられるタイミングがどんどん後倒しになってしまいます。
多くの犬猫をより確実に虐待から救うために、ぜひリンクのページから署名をお願いいたします!
https://www.change.org/cve_animalsos
[i] 動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)
このテーマのゴール

ゴール 10
虐待死をゼロに
劣悪な飼育現場や繁殖所からレスキューされる犬・猫のニュースを耳にすることが増えています。虐待相談窓口は全国にありますが、どこに連絡したらいいか分からないことが多いのが現状です。世の中の虐待をもれなく取り締まり、速やかに解消する仕組みづくりを支援していきます。