活動レポート

野良猫・地域猫を取り巻く深刻な問題とは?

2023.06.19

目次

1.日本における野良猫・地域猫の現状

飼い主のいない屋外で生活する猫を「野良猫」と呼びます。野良猫のなかには、増える野良猫による住民トラブルを解決し、地域と猫とが共生するために「地域猫」として暮らしている猫たちもいます。

そういった野良猫・地域猫に対してみなさんはどういう印象を抱いていますか?

平成 23 年に環境省が実施した「飼い主のいない猫に関するアンケート調査」では、飼い主のいない猫に関する社会的問題を「問題である」と捉えている人が90%以上という結果が出ています。*1

*1出典:環境省公表 飼い主のいない猫に関するアンケート調査(日本、2011)

実際に自治体によせられる猫に関する苦情を見てみると、捨て猫・野良猫に関する事柄、捕獲・保護の依頼、糞尿や悪臭に関する事柄が上位を占めていることが分かります。*1

人間も野良猫に苦慮していますが、同様に猫も困っています。食べ物もなく、寝る場所もない。そのためゴミを漁り、軒下などで雨宿りをせざるをえない状況です。うっかり道路などに出てしまうと交通事故に遭い亡くなることも。常に危険にさらされた過酷な状態で生きているのです。

*1出典:環境省公表 飼い主のいない猫に関するアンケート調査(日本、2011)

野良猫が増える原因の一つは繁殖力の高さです。メス猫は早ければ生後5ヵ月程で妊娠が可能となり、年間で2〜4回の出産が可能。一度の出産で4〜8頭の子猫を産むため、単純計算で1頭のメス猫から1年で20頭、2年で80頭以上に増えることになるのです。

このように猫が増え続けることでトラブルが深刻化していると考えられます。

2.野良猫の歴史

日本における猫と人間との歴史を遡ってみると、最近の研究から2100年前の弥生時代にはすでに猫は日本に存在していたと考えられています。*2

16世紀後半、安土桃山時代にはネズミによる被害が深刻化したことにより「猫放し飼い令」が発令され、この法令以降、猫の放し飼いの慣習が始まったと言われています。

以降、長い歴史の中で猫は飼い猫であっても屋内と屋外を自由に行き来する生活をしており、また不妊手術をしなければならないという考え方も一般的ではありませんでした。

20世紀に入ってから先進国で動物愛護の機運が高まり、日本においても不幸な猫を生まないために猫は屋内で飼育すべき、不妊手術をすべきという考え方が広まりました。また行政では、猫の殺処分数を減らす動きに伴い、令和元年には改正動物愛護法にて飼い主のいない猫の引き取りを拒否することが可能になりました。

*2出典:姫路市教育委員会 姫路市見野古墳群発掘調査報告(2009、日本)

3.野良猫問題を解決する方法としての地域猫活動

このような背景の中で、飼い主のいない猫による社会的問題の解決の一手として評価されている活動が「地域猫活動」です。

地域猫とは、一言でいうと「地域で管理されている野良猫」のこと。

特定の飼い主がおらず屋外で生活するという点では野良猫と同じですが、地域住民の合意のもと、不妊手術を行い一代限りの命とした上で地域で適切に管理し見守られて生活する猫のことを言います。

地域猫活動では、具体的には以下のようなことを行います。

①飼い主のいない猫の不妊手術を実施

新たに子猫が生まれなくなるので、猫の数が増えなくなり、発情による猫同士のケンカや鳴き声が少なくなります。

②猫用トイレを設置し、糞尿の始末と管理

トイレの場所を定めることで、庭などに糞尿をすることが少なくなります。

③給餌場所を決め、清掃・管理

お腹をすかせて、ゴミなどをあさることが少なくなります。

不妊手術に加え、糞尿対策や餌やりなどの見守り活動(適正管理)を行うことで、一代限りの命として猫と地域との共生を図ることを目指します。

4.地域猫活動のモデルケース紹介

地域猫活動はその地域の住民が主体となって行う必要があります。しかしながら、既に地域トラブルに発展してしまっている状況では、住民だけの力では行き詰まることが多いのが現実です。

全国では地域猫活動が成功しているモデルケースが多くあります。共通して言えるのは、地域住民と行政、そしてボランティア(経験のある団体・個人)が手を取り合い、三者が協働していることです。

地域住民・ボランティア・行政の関わり方

*3出典:環境省公表 地域猫活動のポイント(日本)

事例1:東京都千代田区「猫の殺処分ゼロ10年継続中」

千代田区では、全国に先駆けて平成12年より行政による「飼い主のいない猫の去勢・不妊手術費助成事業」が始まりました。行政、獣医師、住民が一体となり飼い主のいない猫に不妊手術を行うことで頭数を増やさないようにしながら、猫たちの命をみんなで見守ろうという地域猫活動です。

この事業を始めるにあたって発足したボランティア団体が「ちよだニャンとなる会」。現在、会では捕獲器の使い方、不妊手術、譲渡先探しのアドバイスやサポート、地域とのコミュニケーションをとるための会報誌やチラシ等の作成・配布などを、千代田区、保健所、獣医師、ボランティアなどたくさんの方々と協力して行い、千代田区では猫の殺処分ゼロを10年連続で継続しています。

事例2:大阪府大阪市「公園猫適正管理推進サポーター制度」

大阪市では、平成23年から「公園ねこ適正管理推進サポーター制度」を実施しています。飼い主のいない猫をこれ以上増やさない、地域住民と猫が共生出来る社会の実現という考え方に基づき、地元の合意のもと、猫の避妊・去勢手術を行い、その一代限りの命となった猫を、地域の猫として地域住民が主体となって適正に管理する取組みです。

サポーターは登録制で、行政が開催する事前研修の受講が義務付けられています。平成25年時点で公園ねこサポーターとして登録されているのは149名。市内45の公園で活動が行われていました。サポーターはルールに従った餌やりを行い、管理している猫の頭数を定期的に行政に報告し個体管理の徹底も行われています。

社会には猫が好きな方も嫌いな方もいます。まずは、地域猫活動を行う背景や意図を正しく理解することが大切です。そして知った人から一歩を踏み出すことが、人と猫の共生に向けた第一歩を踏み出すことになるでしょう。

地域猫活動の詳しい実践方法については、保護活動マニュアル|地域猫活動のすすめ方をご覧ください。

保護マニュアルとは

犬猫の保護から譲渡までの一連の流れに沿って必要な知識・ノウハウを網羅し、さまざまなケースを解説しています。譲渡時などに必要となる法的な文書についても、弁護士の監修済みテンプレートを提供。それぞれのコンテンツにおいて、その分野のプロフェッショナルの実践的なアドバイスも記載しています。

出典一覧: 

*1 環境省公表 飼い主のいない猫に関するアンケート調査(日本、2011)URL

*2 姫路市教育委員会 姫路市見野古墳群発掘調査報告(日本、2009)

*3 環境省公表 地域猫活動のポイント(日本)URL

※掲載の文章・写真はアニマル・ドネーションが許可を得て掲載しております。無断転載はお控えください。

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地域猫を生み出した責任・守る責任

野良猫の平均寿命は3-5年と飼い猫の1/4という短さ。交通事故で命を落とす猫は年間30万匹。殺処分対象の6割が行き場の無い野良の子猫という厳しい現実もあります。過酷な状況下の野良猫を地域一体で守る活動を促進します。

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