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活動レポート

更生を支える、犬と向き合う時間「保護犬育成プログラム」取材レポート第2弾

2026.07.06

目次

刑法改正と動物福祉の新たな取り組み

2026年6月の刑法改正による拘禁刑下の取組として、一部の刑務所では動物保護団体などの協力を得て、受刑者が保護犬を訓練し、家庭への譲渡に貢献する「保護犬育成プログラム」の取り組みが行われています。 受刑者に自己肯定感や他者への思いやりを向上させるとともに保護犬の殺処分を減らす社会貢献を推進しています。

アニドネ認定団体である「認定特定非営利活動法人ペッツ・フォー・ライフ・ジャパン(以下、PFLJ)」は、いち早く法務省 近畿矯正管区、姫路少年刑務所との連携によって、このプログラムに取り組んでいます。

手探りの中で始まった取り組みは5月で10回目の訪問となり、改善を重ね受刑者と犬に確かな変化をもたらしました。前回(※2026年1月)に続き、その様子を現場取材を通してお伝えします。

人と犬が、もう一度やり直す力を取り戻す場所

姫路少年刑務所の運動場に、軽やかな足音が響きました。元野犬のきこちゃんが、尻尾をピンと立てて走り出します。その横では、受刑者が息を弾ませながら並走していました。
室内では緊張していたきこちゃんが、外に出た途端に見せた変化です。

受刑者はきこちゃんの変化に思わず笑顔になり、名前を呼びながら寄り添って走る、その姿には前を向いてもう一度やり直そうという力を感じることができました。

担当の刑務官は、そんな様子を見て静かに言いました。「この時間だけ、みんな本当にいい顔をするんです」
なぜ、刑務所で保護犬の育成に取り組むのか。その答えは、この一瞬の光景の中にありました。

受刑者と保護犬が向き合う時間「保護犬育成プログラム」

今回のプログラムでは受刑者2名と犬1頭の4組で行われ、プログラム経験者と初心者が組になり、受刑者同士で教え、学び合える形を取っていました。
今回参加した犬は「ルカくん」「リコちゃん」「スイくん」そして元野犬で人馴れが十分でない「きこちゃん」の4頭。それぞれ違う背景を持ち、新しい家族に迎えられるためには社会化や信頼づくりが必要な保護犬たちです。
受刑者は、犬が保護されるまでの経緯や動物福祉の考え方、社会化の大切さを学んだうえでプログラムに参加します。

「犬は言葉を話さないからこそ、表情や仕草をよく観察して気持ちを読み取ることが大事です。アイコンタクト忘れないでね。」PFLJスタッフの説明に、受刑者たちは背筋を伸ばし、真剣に耳を傾けていました。

当日のプログラムの内容をご紹介します。  

13:30 姫路少年刑務所正門 PFLJの保護犬たちが到着

13:40 刑務所内運動場 保護犬たちはPFLJスタッフに連れられ、歩きや排せつなど軽く身体を動かします

14:00 刑務所内職業訓練場 プログラム開始
・今回の内容や意義のレクチャーに続き、一人と一頭でペアになり「リードの扱い」「ヒール」「首マッサージ」を実践
「首マッサージ」は母犬が子犬を銜えて運ぶ時の安心感につながるスキンシップですが、犬との信頼関係がないとできない行為です

14:30 刑務所内運動場 初めての屋外トレーニング
・これまでは室内だけで行ってきましたが、10回目で初めて犬たちと屋外へ出て、広い運動場で一緒に歩く、一緒に走る、そして排せつのお世話も行いました

14:50 再び刑務所内職業訓練場へ
・保護犬たちにブラッシングとボディタオルで身体拭き
・片づけて終了

15:00 解散 保護犬たちは元の車に乗り帰路へ

今回は初めて、首マッサージと屋外トレーニングが実施されました。
首マッサージは受刑者と犬が向き合って室内訓練をしっかりと積み重ねてきた結果、前回から犬たちがリラックスする状態が見られたので、このタイミングでやってみようと判断されたそうです。

“心を開いていく瞬間”   

首マッサージは“母親が子を守る行為”につながるものであり、信頼関係が必要なスキンシップだという説明に受刑者たちは少し緊張した面持ちでした。ぎこちない彼らの手に、次第に犬たちは身を任せはじめました。双方がリラックスできたことが伝わってきました。

屋外に出ると、室内では大人しかったきこちゃんの尻尾が上がり、トレーニング後のごほうびとして、全力で受刑者と一緒に運動場の端から端まで走り抜けていました。誰もが息を弾ませ走り終えると「すごいね!」「よかったね!」と犬に語りかける受刑者たち。

水を飲ませる、おしっこやうんちの処理を積極的にお世話する姿がありました。
「この子のために何かしたい」その気持ちが自然と行動に表れています。

しつけから始まった受刑者と犬の間に、お互いが影響し合い“心を開いていく瞬間”を見ることができました。

「保護犬育成プログラム」が育む大切なこと

姫路少年刑務所でこのプログラムを推進する法務事務官・看守長の山中さんは、受刑者の変化をこう語ります。

「犬と向き合う時間だけは、素直な感情が出てくるんです。 刑務所の中ではなかなか見られない“自然な表情”が見られるようになりました。PFLJの皆さんが教えてくださることで、刑務官以外との関係性を築く機会になっており、コミュニケーション能力の醸成にもなっています。これらは、彼らが社会で生活していく上では欠かせないものなのです。」

犬という“他者”を理解し、配慮し、責任を持って接する経験は、受刑者にとって大きな学びになります。自己肯定感や他者へのおもいやり、主体性が育ち、社会復帰に必要なコミュニケーション能力の土台にもつながっていきます。

「信頼していただいたことに感謝」    

参加した受刑者の感想文をご共有いただきました。全ては紹介しきれないので抜粋して紹介します。文章は、共有いただいたものをそのまま掲載しています。

今回犬と人の信頼関係を構築する首マッサージをさせてもらえて、そのような大事な行動を僕達8人に信頼していただいた事に感謝でした。 リコちゃんもリラックスした表情で落ち着いてくれて、ふっと一息つけたし、そうして身を任せてくれた事に嬉しい気持ちと、こっちもリラックスする事が出来て、何の素直な気持ちで家に連れて帰りたい!といつも以上に思いました。(後省略)

(前省略)本日のペアは「きこちゃん」。内気な子だけど外に出ると態度が一変して、少し走った時には楽しそうな姿をしていてこちらまで嬉しい気分になれた。犬と人の関係はこういうものなのかもしれない。片方が落ち込んでいたら片方が寄り添い、片方が楽しんでいたらもう片方も気分が良くなる。そうしてこれまでもこれからも両者の関係をつむいでいけるよう、出所してから自分も関われたらいいなと思った。

(前省略)前回の感想文でもっと広い場所でできたらと書いてすぐ、運動場での散歩だったので、私が書く前から決まっていたのかもしれないけれど、色々と動いてくれた方々に感謝したい。運動場で散歩した後、一緒に走って改めて思ったけれど、やっぱり広い場所で全力で走るのが一番楽しそうで、トイレもできて犬たちには良いように感じたし、私も、犬達が全力で走っている姿や散歩している姿を見ている方がすごく良い時間だと感じた。しつけも大切だけど、犬達にはやっぱり全力で走りまわってほしい。それが犬の本望だと思う。 (中省略)ルカくんと走ったときに想像の10 倍は速くて、散歩中にリードがはずれたりしてパニックになるとまずつかまらないだろうと危険もしっかり感じることができたので、犬のためにもリードや首輪、ハーネスなどの道具の確認やお手入れをしっかりする必要があると知ることもできた。

(前省略)私にとって、この「保護犬プログラム」はこれまでの社会生活や受刑生活で暴力事件が多かった私にはぴったりはまりました。 (中省略)次の保護犬プログラムまで頑張ろうと思い、無事にここまでこれました。ここまでは、私が受けとる事でしたが、この企画に参加する事で自分が役立てたのだろうか?保護した犬が新しい飼い主へと渡る時に役立つ事ができたのか?と思いました。 毎回準備、移動、犬の管理で大変だった事が察せられます。本当にありがとうございました。

どの言葉にも、犬と向き合う中で芽生えた“誰かのために行動する気持ち“が溢れています。
自分たちを信頼して犬を任せていただいたことへの感謝も添えられています。
そして“自分が役立てたのだろうか”と自問自答する言葉がとても印象に残りました。

保護犬の介在が培う信頼関係

PFLJスタッフは、犬と受刑者の関係の変化をこう語ります。

「やっとマッサージを任せられるとか、外に出るところまでスキルが向上してきました。私たちも安心して任せられることが増えたのが、犬たちにとっても受刑者の方にとっても良いことだと思います。スタッフに女性が多いため、犬たちは男性と触れ合う機会が少ないので、男性に何かしてもらうというのは犬たちにとっては良い経験なんです。」

元野犬のきこちゃんについて「1回目は表情がこわばっていた受刑者の方が、今日はすごく柔らかい表情で迎えてくれたんです。だから“きこちゃんを任せられる”と思いました。実際任せてみると、きこちゃんがリラックスしていてとても良かったですね。」とお話しされました。

犬が持つ力が人の心を動かし、人が犬のために変わっていく、時を重ねた双方の間に信頼が生まれていることが伝わり、PFLJの皆さんが彼らの変化をちゃんと見ているということが分かります。

不安を抱えながらスタートした取り組みだったそうですが、受刑者へ“教える”から“任せる”へ、着実に彼らの成長を後押しする支援に進化しています。
PFLJスタッフと受刑者の間にも信頼関係が培われていました。

少年刑務所と保護団体の二人三脚 

法務事務官・看守長の山中さんは、プログラムについて語ってくれました。

「毎回 “これでいいのか” と手探りです。でもPFLJさんが状況に応じた提案をしてくださるんです。とても臨機応変に対応いただけるので、受刑者も次を楽しみにしてます。
犬の負担に十分配慮して、できると思うことをどんどんやっていきたいと思います。受刑者だけでなく、保護犬にとっても大きな意味のある取り組みだと実感しています。
PFLJさんと二人三脚で進められることに感謝しかないです。」

PFLJスタッフはこう語ります。
「今回の屋外トレーニングも最初から決めてたわけではなく、犬たちや受刑者の状態を見て“今ならできる”と判断したのです。これからも柔軟に内容を変えながら、受刑者と犬たちにとってより良いプログラムにしていこうと思っています。」


姫路少年刑務所とPFLJの丁寧な二人三脚が、この取り組みの可能性を広げていると感じられました。

まとめ:未来へつなぐ

法務省矯正局は、これからの矯正のあり方として「地域との共生」を大切にしています。
人は社会とのつながりの中でこそ、償いと更生に向けて主体的に歩き出せる――その考えのもと、受刑者が地域の一員として社会課題の解決に関わる取り組みが進められています。

改めて、姫路少年刑務所とPFLJが取り組む「保護犬育成プログラム」は、その理念をまさに形にしたものだと感じました。 保護犬の社会化を支えることは動物福祉の向上につながり、同時に受刑者にとっては“誰かのために行動する経験”となり、社会復帰や再犯防止に向けた大切な一歩になります。
現場では、関係者の粘り強い工夫と、犬たちが持つやさしい力が重なり合い、受刑者の表情や行動に確かな変化が生まれていました。 その小さな変化の積み重ねが、未来の社会復帰につながっていく――その可能性を強く感じました。

これからは、このつながりをどう“切れ目なく”未来へつないでいくかが大切です。
更生後の支援、保護犬たちの譲渡、地域との協働。
そのすべてを、これからも一緒に考えていきたいと思います。

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人を支える犬がいます。近年は、研究の成果、動物との触れ合いが、人の心を癒したり痛みを緩和する効果を持つことが分かってきました。人に寄り添って心を癒すことを仕事とする犬猫の活躍の場を広げていきます。犬に過度な負担をさせないのが原則だと考えています。

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