活動レポート

「売る」から、「出会う・集う」へ…ホームセンターが譲渡型保護猫施設を常設した理由

2026.04.03

目次

日本ではまだ数が多くはありませんが、ペットとの出会いの形を変える新たな取り組みが生まれてきました。その一つが、今回取材をさせていただいた「綿半スーパーセンター塩尻店」です。

綿半スーパーセンター塩尻店はこれまで、地域に根差したホームセンターとして、生鮮食品を含む、住まいと生活に関連する幅広い商品を取り扱ってきました。その中の一つに、常設のペットショップもありました。今回取材させていただいたのは、元々常設ペットショップだったスペースを新業態にリニュアルした、常設の譲渡型保護猫施設です。保護団体とのタッグで実現したそうです。

この取り組みは、動物福祉向上、地域社会活性化、企業活動の三つの視点でのメリットを創出する可能性があります。

日本におけるペットとの出会いとペット関連市場

日本の犬の飼育頭数は約6800万頭、猫の飼育頭数は約9000万頭。1)
​​矢野経済研究所の調査によると、日本のペット関連市場は2021年度に約1兆7,187億円、2023年度には約1兆8,629億円に拡大しており、現在も成長を続けています。2)

矢野経済研究所 ペットビジネスに関する調査(2024年)より

日本では犬の入手経路の約半数がペットショップ経由とされるなど、これまで犬は「販売」ルートから迎えられるケースが主流でした。最近は、メディアの報道などから、犬についても保護団体や譲渡施設を通じて迎えるという選択肢に注目が集まり始めています。保護犬の譲渡には、命をつなぐという社会的な意義に加え、飼い主の飼育環境や相性を丁寧に確認したうえで迎えられるというメリットがあります。

一方で、猫は拾って保護したり知人から譲り受けたりするなど、「譲渡」を通じて家族に迎えられる割合が高いとされています。地域で保護された猫を新しい家庭へつなぐ活動も広がっており、保護猫カフェや譲渡会などを通じて出会う機会が犬と比べて多い傾向です。

ここでお伝えしたいのは、犬猫との出会い方の選択肢を広げていくことが、日本の犬猫との共生にとって重要なテーマになりつつあるということです。

マースジャパンリミテッド「日本におけるペット(犬・猫)に関する調査データより3

ホームセンター常設 譲渡型保護猫施設という新しい形

今回の取材では、綿半スーパーセンター塩尻店が導入した、常設の譲渡型保護猫施設を取材させていただきました。2026年2月22日に新規オープンしたこちらは、元々犬や猫の生体販売のスペースでした。

Before: 犬の展示販売スペース。日本ではよく見る光景
After: 広々とした譲渡型保護猫施設の奥に、トリミングサロン、動物病院も併設された

新設後は、保護団体である一般社団法人もふもふ堂が運営する譲渡型保護猫施設となりました。また、トリミング&ホテルスペースに加え、土日に営業している動物病院を併設しているのも特徴です。そして、保護猫たちの健康を考え、以前は取り扱いのなかった高機能フードの棚を新たに10棚分導入したそうです。

譲渡型保護猫施設の特徴は、里親を探している猫とふれあいながら相性を確認できること、また譲渡後も保護団体に近況報告や相談ができることです。また施設の運営自体も、動物福祉に配慮し、8名までの入場制限、入場者の水以外の飲食は不可、11時から15時までのオープン、猫への負担を下げるよう人目につかない場所もたくさん用意するなどの配慮を行っているとのことです。

担当である綿半パートナーズ株式会社 君島さんにお話しを伺いました。

左が君島さん、右はマネージャーの関さん

「これまで綿半では14店舗で保護団体さんと連携し、譲渡会を定期的に開催してきましたが、常設で運営する形は初めての取り組みとなります。保護動物を譲り受けるという文化が、地域の中で少しずつ広がっていくきっかけになればうれしいですね。この場所が、保護団体や保護動物を知るきっかけとなったり、地域の人とつなぐハブのような存在になっていくことを期待しています。塩尻店では譲渡施設という形をとりましたが、保護犬についても4店舗で譲渡会の定期開催をしています。

今後このような形を広げていきたいですが、ご一緒させていただく保護団体さんはどんな団体でもよいというわけではなく、動物福祉の考え方や運営体制などをしっかり確認したうえで協働させていただく形を取っていきたいです。

また、ここで出会った猫と人の暮らしに最後まで寄り添える店舗にするため、動物病院を併設し、さまざまなニーズに応えられるようフードのラインナップも充実させました。いつでも気軽に立ち寄りたくなる場所になっていけたらと思っています」

もふもふ堂でボランティアをしているスタッフにお話を聞きました。

猫たちがリラックスできるよう最大限配慮している。兄弟猫も爪とぎの上でリラックス

「長野県では、飼育知識の不足による多頭飼育崩壊や、家の内外を自由に行き来させる飼い方によるロードキルも少なくありません。私たちは、保護した猫を新しい家族に繋ぐだけではなく、一度多頭飼育崩壊からの保護を行った家庭がまた同じ状況に戻らないよう、訪問したりメッセージで連絡を取りながら、フォローして見守るようにしています。地域の保健所、動物愛護センターともしっかりと連携しています。

子猫は比較的早く新しい家族が見つかりますが、成猫や人に慣れていない猫はそう簡単にはいきません。保護猫施設は、そうした猫たちにとって安心して過ごせる居場所であり、時間をかけて新しい家族と出会える大切な場だと感じています。保護された動物は少なからず苦労してきた子達なので、幸せになってほしいと願っています」

地域の保護動物という問題を、地域に根ざすホームセンター、地域の保護団体、地域の人が一体になって解決できるという座組が革新的です。このような形を取ることで、松本市・塩尻市での保護猫の譲渡促進、動物福祉視点の向上が進むことを期待したいです。

犬猫の生体販売をやめても売上を伸ばす方法の検討へ

ガラス面はロールカーテンがあり開店時間以外は外から見えない配慮。猫たちが自由に出入りできる猫ドアも奥のドアに設置。

前項でお伝えした通り、地域の視点や福祉の観点から、大変意義のある取り組みであることはご理解いただけたかと思います。
一方で、このような活動を広げていくにあたり、ペットの生体販売が少なからず売上に貢献してきた側面もあり、生体販売をやめることで売上にどのような影響が出るのかが、企業にとって重要な判断材料になると考えられます。
そこでAWGsでは、綿半スーパーセンター塩尻店の取り組みを踏まえ、次の2つの視点からこのような業態転換を推奨したいと思います。

1. 初めて猫を迎え入れてからずっと通う拠点に

最初は猫のかわいさに惹かれて施設に通う人も多いと思いますが、猫とのふれあいを通じて飼育を検討する方も出てくるでしょう。実際に迎えることを決めた飼い主は、その場で飼育に必要なグッズや消耗品、フードなどを一通りそろえる可能性が高いと考えられます。

また、保護猫施設にはボランティアが常駐しているため、アドバイスを受けながら「いつもこの店舗で猫関連商品を購入する」という購買動線も生まれやすくなります。綿半スーパーセンター塩尻店では、新たにトリミングやペットホテルを新設したことから、さらに接点を増やすことにもなります。

2. 高機能フードの需要という観点

近年は健康志向の飼い主が増えていることから、フードメーカー各社も多様な商品ラインナップを展開しています。素材にこだわったプレミアムフードや、個体の状態に合わせた療法食などがその代表例です。アレルギー対応や消化に配慮したフード、年齢や体調に合わせた機能性フードなど、細かなニーズに応える商品が増えています。

保護猫の場合は保護された背景や健康状態が個体ごとに異なることも多く、体調管理のためにフード選びが重要になるケースも少なくありません。綿半スーパーセンター塩尻店では、新たに動物病院を併設したことから、獣医師の的確なアドバイスのもとにフードが選べるという利点があります。

店舗にとっての新しい価値

綿半スーパーセンター塩尻店

オープン当日は、保護猫施設の開店が11時だったにもかかわらず、「猫に会いたくて」と9時ごろから来店するお客さんの姿が見られました。

さらに、綿半スーパーセンターは生鮮食品の販売も行っているため、日常的に利用する地域の人が多いという強みがあります。買い物のついでに猫に会いに立ち寄ったり、寄付ボックスにフードや消耗品などの気持ちを入れていく人もいらっしゃるでしょう。

また、常設型のスペースは滞在時間が自然と長くなるため、店内の商品に触れる機会も増え、購買につながる確率が高まります。もともと買い物の予定がなくても「猫に会いに来る」という来店動機が生まれることで、店舗集客をより増やす可能性があります。

まとめ:進化するペット売場の可能性

今後、ペットショップやホームセンターの役割は、これまでの「生体販売中心」から徐々に広がっていく可能性があります。保護動物の譲渡を一つの柱としながら、フードや用品、飼育サポートといったサービスを充実させる店舗や、地域の飼い主同士が情報交換できるコミュニティ拠点としての機能を持つ店舗も増えていくと考えられます。

こうした動きは、動物福祉とビジネスの両立を模索するペット業界の新しい潮流とも言えるのではないでしょうか。動物の命を守る取り組みと、持続可能な事業としてのペットビジネスを両立させることは、これからの社会においてますます重要になります。

今回の綿半スーパーセンター塩尻店の取り組みは、そうした変化の象徴的な事例の一つといえるかもしれません。保護動物と人との出会いをつくりながら、ペットとの暮らしを支える商品やサービスを提供していくという、新しい形の店舗が、今後のペット業界の可能性を示しています。


1 一般社団法人ペットフード協会
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://petfood.or.jp/pdf/data/2023/3.pdf

2 ​​矢野経済研究所
https://www.yanoresearch.com/press-release/show/press_id/3568

3 マースジャパンリミテッド
https://www.mars.com/ja-jp/news-and-stories/articles/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%83%9A%E3%83%83%E3%83%88%EF%BC%88%E7%8A%AC%E3%83%BB%E7%8C%AB%EF%BC%89%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E5%88%9D%E5%85%AC%E9%96%8B

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