20歳を超えろ

To:りゅう

From:myawo

 コンビニ前の車の下で、どこかの誰かと目が合ったんだ。しばらく見つめ合ったその日はどっかに行っちゃったけど、何日経ったかな、また来て段ボールに入れられた。知らない家に来たら、人間は何してもやたらニコニコしてたけど、先輩猫たちが気に食わないって顔してた。睨まれたら立ち去って、もめ事は回避。平和主義だからね。  僕を連れてきた人間は「こんなに人間と目を合わせる猫はめったにいない。きっと天才だ」と思ったそうだけど、結局他の猫と比べてもやや残念だったらしい。ただ、「イケメンでスタイルが良くて、運動神経抜群で、性格も超良くて、人間だったらモテモテ」って褒めてくれる。まあどっちでもいいよ。猫だし。  外に居たときもらっておいしかったのと、同じ匂いがしたから突進したこともある。カップラーメンって言うらしいけど、ここで舐めたら全然おいしくなかった。  毎日良く食べ、遊び、まあ楽しく暮らしてるうちに、姉さん猫たちは人間に薬飲まされたり、僕も行ったことのある病院に連れていかれたりするようになった。そして、いつの間にか僕だけになった。優しかった「お母さん」っていう人間も今はいない。  ここ何年かは処方食って言いうやつが出てくるようになって、薬や病院も。歯が痛くなって、抵抗もできず眠らされたと思ったら抜かれてたし、目も見えなくなった。でも何の不自由もない。猫だからね。ご飯の時は「これはいや」ってはっきり意思表示するよ。そしたらいろんな良い匂いのトッピングが追加されるようになったからね。  もうすぐ20歳だって。人間は「最後の猫」って言ってる。それが何のことかよく分からないけど、とにかくおいしいご飯はしっかり食べて、日向ぼっこして、よく眠るよ。自分の年やできなくなった事を嘆いたりしない。猫だし。