未知の生物のおすわり
To:トッティ
From:中里昭広

トッティは6歳で我が家にやってきた保護犬です。その出会いは都内の公園でした。保護活動をされている方と待ち合わせをしてそこにトッティはやってきました。 トッティは白髪混じりの黒いラブラドールレトリバーです。パソコンで画像は確認していましたが初めての出会いに嬉しさと同時に緊張が湧き上がりました。「受け入れてくれなかったらどうしよう…」「きっと犬はそんな感情も感じ取ってしまうぞ…冷静に冷静に…」何度も自分に言い聞かせましたがそう思えば思うほどドキドキしてしまいました。 「リードを持って少し歩いてみますか?」不意に私に保護活動団体の担当の方は声をかけてきました。「あっ…は、はい」ちょっとくたびれた茶色い革のリードを渡されました。その先には黒い未知の生物が繋がっている…。グンっと黒い未知の生物は自分の行きたい方向に進み始めました。私はなるべく短く持ってあげて本当に短い間でしたが公園を行ったり来たりしました。 その後のことです。黒い未知の生物は私の足の甲の部分に上手に「おすわり」をしました。足の甲に感じた重みぬくもり(靴越しに本当にぬくもりが伝わったかあやしいが確かに感じた)で黒い未知の生物はその時からトッティになった気がしました。 それまでは「ちゃんとお世話できるだろうか」「受け入れてもらえるだろうか」とネガティブなイメージばかりがあったのに不思議とそれらがなくなって安心してお尻を預けている(ように見える)トッティに「うちに来るかい?」と声をかけました。それに対して目に見えたリアクションをしてくれなかったけど、「うん」と言ってくれているような感じがして後日正式にトッティ我が家の子となりました。 今にして思えばあの一度のおすわりで、私の不安や余計な詮索をあっさりと打ちこわし、その後の私の日々を実に彩り豊かにしてくれました。本当にトッティに出会えたこと、受け入れてくれたことにトッティがいなくなった今日も感謝しているのです。