天国で待っててね
To:佐橋 ぷるーと
From:森崎 徹子

金魚の餌を買いに行ったペットショップにいた、その子は他の売られている子とは違って、隅のゲージに入れられ、何かに怯えながら、じっと私と母を見上げた。しっぽを振ることもなく、値段も他の犬の8分の1で、その値段で犬が売っている理由を聞くと、飼い手がつかないから、値下げをしながら飼い主を待っているという。お店の人が、もし飼って頂けるなら、ゲージや餌、全部タダでつけます。って言われて、計算したら、その子には、もうほぼ金額なんてなかった。もともと何度も犬を飼っていた我が家は、犬を飼うということが大変と理解はしていたが、母が私に、家族として受け入れたいと言った。私も同じ気持ちだったのでそのまま連れて帰ることになった。手の中で震える、希望がない目をしたその犬幸せにしたいって思った。家につくと、角をみつけてはそこでガタガタ震える、その子にプルートと名前をつけた。ぷーって呼んでみた。ペットショップでは噛まなかったのに、触ると血がでるほど噛む。ずっと牙をむけてグルグルと唸っている。それでも毎日名前を呼んで、いろんなとこへ連れて行くと1カ月ぐらいで私と母だけは噛まなくなって端には行かなくなった。私達の側で仰向けになって爆睡するようにもなった。寝る時も、テレビを見る時もずっとぴったりひっついてきた。ぷーといっぱい思い出をつくった。ぷーが家に来て14年後、結婚した私は家を出た。ぷーは私の部屋をずっとガリガリして呼んでいたらしい。ぷーの毛並みが一気に老け込んでしまった。私はまた家に戻ってきた。徐々に大きくなる私のお腹にぷーはぴったり耳をつけるのが日課になった。赤ちゃんを連れて帰るとベッドから離れないぷー。赤ちゃんが泣くと、ぷーまで大騒ぎ。老け込んでいたぷーが若返って、またぷーが走り回る日々。その赤ちゃんも一緒に走り回るようになって、賑やかな毎日を過ごしていた。兄貴面なぷーが17歳を迎えた、その翌月のある日。 昼間、ずっと息子のそばから離れない。いつもは適当に遊んでは自分のベッドに行くのに。 その夜、息子が寝静まって数時間後、息子から離れたら、急にゼーゼーとしだしたぷー。病院からも、心臓を指摘されていたし、年齢もあったので、いろいろ覚悟はしていたが、急にそのタイミングがきた。私と母は何度も名前を呼びながら身体をさすった。そして、ぷーは天国へ向かった。ぷーに聞きたい。我が家に来て良かった?