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保護ビジネスの裏側とは?正しく保護犬猫を迎えよう

活動レポート

保護ビジネスの存在を知り、正しく保護犬猫を迎えよう

2024.02.21

目次

最近よく耳にするようになった保護犬・保護猫。有名人が飼っていることでも広まり、善意のある方々が犬や猫を家族に迎えるルートのひとつになったと言っても過言ではありません。その陰で、保護された犬や猫を使って利益を得る存在が問題になっています。飼い主の善意を利用し、本来営利で行われるはずではない保護活動で利益を得るということは、保護犬・猫を譲るという行為が、犬猫を販売することと同じになってしまうということでもあります。保護ビジネスと総称されるその行為にどのような問題があるのかを考えましょう。

本来の「保護」の意味

本来、「保護」という定義は、飼い主が飼えなくなった・劣悪な飼い主のもとからレスキューされた・迷子になったケースなど、一度は飼われていた動物を救い出す行為を指しています。あるいは、野良だった犬や猫を家庭に迎える行為を指すこともあります。

例えば、虐待されていた犬が保護団体に助けられた際に愛情を持って家庭で迎え入れるとか、道でお腹を空かせている子猫を拾って、家庭で飼育するために病院に連れて行って家族になるなど、善意からくる行為を指していると捉えられることが多いのです。

AWGsを運営するアニマル・ドネーションでも犬や猫を「保護」をする団体(以後、保護団体)に寄付をお届けする活動を継続している通り、助けるべき存在を助け、愛情を持って育ててくれる里親に繋ぐという保護団体の活動は、動物愛護の観点から素晴らしいものと捉えています。

増え続ける「保護」、どこまでが適切な範囲?

本来良い活動である「保護」については説明した通りです。一方で、営利を目的としたペットの量産体制から「保護」される犬・猫が増えていると予想されていることについて考えます。それは、いわゆる在庫整理のような意味合いでの犬や猫が散見されるようになったことからも類推されます。

以下に挙げるケースは本来であれば「保護」の対象ではないのですが、救わなければならない場合が出てきています。ペット業界の営利主義がいきすぎなければ、このような状況が拡大しなかったのではないでしょうか。

この問題は、動物福祉の概念が浸透する前に、犬や猫がモノとしての流通が出来上がったことに起因していて、今もなおそのような考えでペット事業を営んでいる業者がいることから依然として状況は変わらない、もしくはコロナ禍を経て悪くなっているようにも見えます。

1.ブリーダー崩壊

全てのブリーダーがそうではないという前提ですが、動物愛護の精神の真逆のような環境で多数の犬や猫を育てて売るブリーダーもいます。長野県松本市で600頭以上の犬猫を劣悪な環境で飼育していたことで、ブリーダーの経営者が動物愛護法違反で逮捕されたニュースは、メディアでも大きく取り上げられました。

2.不健全なブリーディング

「小さい」「見た目が可愛い」「毛が抜けない」など様々な結果を求めて、体外受精も含めて無理な交配が行われているケースがあります。デザイナー犬と称される純血同志のミックスは、どんな要素を持って生まれてくるかわからず、当然遺伝性疾患のリスクも高いと考えられます。その過程では、遺伝性疾患を持つ犬や猫が生まれてくるリスクも上がります。そのような過程で疾患を抱え生まれてきた犬や猫は、当然ペットショップでは売れず迎えてくれる家族を探すのはかなりハードルが高い状況に陥ってしまい、「保護」の対象となります。(遺伝疾患についてはAWGs ゴール「ありのままの姿を愛そう」テーマ「病気や遺伝疾患の知識を学ぼう。そして共に歩む飼い主に」へ

3.繁殖引退犬・猫

ブリーダーで繁殖をしていた犬や猫はその後の命を愛ある家族と共に過ごす必要があります。本来は、繁殖を引退した犬や猫はブリーダーが生涯面倒を見るか、ブリーダーが心ある方を探して家庭で安心して生活するべきです。それがブリーダーの義務でもあります。ただ心ないブリーダーの元で繁殖をさせられていた場合、繁殖回数等を正しく管理されず身体がボロボロになってしまっている犬や猫がいるのも事実です。ろくに運動もさせてもらえずケージの中に入れっぱなしになっている犬や猫が「保護」されるケースもあります。(繁殖引退犬・猫についてはAWGs ゴール「全ての犬猫へ人のぬくもりを」テーマ「引退繁殖犬・猫をわが子として迎えよう」へ

4.ペットショップの売れ残り

ペットショップに展示販売される犬や猫はある程度の月齢になってしまうと値下げされ、その後も家族が見つからない場合は売り物にならないと判断されてしまいます。そのような場合も「保護」の対象となっている場合もあるかもしれません。(ペットショップのあり方については、AWGsゴール「感情ある命を迎える仕組みの変革を」テーマ「新しいペットショップのカタチを作ろう」へ

5.飼い主の知識不足

「コロナ禍で寂しかったから買い始めた」とか、「ペットショップで目があってしまったから」などの理由で事前知識がないまま衝動的に犬や猫を飼ってしまう飼い主も多くいます。その結果、飼いきれなくなってしまう無責任な飼い主のせいで、「保護」される状況に追い込まれる犬や猫も増えてしまっています。

今後は動物愛護法により飼育できる数値規制も徹底されるため、残念ながら心ないブリーダーから手放されてしまう犬や猫も保護対象となることが見込まれています。

様々な要因で犬や猫が「保護」される可能性があることをお伝えしてきましたが、もちろん保護された犬や猫に罪はありません。AWGsでは、そもそも犬・猫はモノではなく、感情のある生き物、家族の一員として捉えています。ペット業界の量産体制、また、ペットを扱う業者の過度な営利主義、さらに飼い主の身勝手な行動など多種多様な要因が複雑に絡み合って「保護」される犬や猫が増えてしまう状況を危惧しています。ましてや、「保護」された犬や猫を販売することが利益を生む種として新たなビジネスの源泉になることは避けなければいけません。

ブリーダー崩壊やペットショップの売れ残りなど行きすぎた営利が理由で保護される犬や猫が存在するという悲しい現状(画像はイメージです)

法律における「保護団体」の捉え方

様々な要因から保護される犬・猫が増えると、動物愛護センターや保健所、保護団体に引き取られる数が増えます。動物愛護センターや保健所は、公的機関です。一方で、「保護団体」は法律からみるとどのような位置付けでしょうか。

動物愛護法で定められる第一種動物取扱業者と第二種動物取扱業者

そもそも動物愛護管理法は基本原則として、すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう定めている法律です。その中で、人の居住部分と区分できる飼養施設において、一定の頭数を飼養または保管する場合、第一種動物取扱業者か第二種動物取扱業者として届出が必要です。

この法律で定められている第一種動物取扱業者と第二種動物取扱業者の大きな違いは「営利性」です。第一種取扱業者は営利性を持つ場合に取得するもの。そして、第二種動物取扱業者は、営利性を有しない場合に取得するというのが正しい捉え方です。
ほとんどの保護団体は営利性を有しないため第二種動物取扱業者を取得しています。

法的にグレーな保護ビジネス

AWGsとして問題提起したいのは保護ビジネスとして、保護動物を扱う団体が「保護団体」と称し、保護犬・保護猫の譲渡で利益を得ているケースについてです。法的には営利性のないものとされている「保護団体」を装い、保護犬・保護猫の販売により利益を得る構造は、本来動物愛護管理法が定めている「保護団体」ではないと言えます。ましてや、ペットショップの量産体制により、保護犬・保護猫が増え、そこでさらに保護ビジネスの利益が拡大していくという悪い連鎖を断ち切れないことに繋がってしまいます。

ここで問題になるのは、どこまでが営利でどこからが営利ではないのかです。動物愛護管理法には、営利目的とそうでないものの具体的な違いや線引きは定められていません。実費を超えたら営利とされるのか、移動の車でガソリン代かかるから交通費名目でいくらか乗せてもいいのか、さらには人が動いているのだから人件費分も乗せてもいいのかが不明瞭です。どこまでが「実費」というのかという問題もあります。ですので、実費+αをとっていたとしても、「営利行為をしているのに第一種登録がないから法律違反である」とは簡単には証明できないところが難しいところです。一方でその定義が明確になった場合に違法となる可能性はあります。

次に、NPO法人の「保護団体」として第一種取扱業者登録をしている団体もあります。もちろん、NPOなので非営利ですが、「販売業」で取得している場合に、保護犬・保護猫を販売するだけでは違法にはなりません。ただ、非営利なので第二種と同様、営利かそうでないかが問題になります。また、「保管」や「展示」という業態で、実質的に売買とみられるような金額で譲渡している場合は、違法とされる可能性はあるようです。

また、法人格すら有しない個人がブリーダーの下請けとして、売れない犬や猫を保護しているという形式を取り、高額で販売に近い形で譲渡している場合も見受けられます。その場合は、無登録営業として、罰則もある違法行為とされるケースもあります。

出典:環境省 動物愛護管理法

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/trader_c2.html

保護されている犬や猫はどこから来たのか、飼う側も見る目を養いたい(画像はイメージです)

もしかしてそれ「保護ビジネス」?

大切なのは、このような営利目的での「保護」に加担しないことです。このような保護ビジネスで飼い主がお迎えし続けてしまうと、負の連鎖を断ち切れないことになります。表面上はとてもいいことに見える保護犬・保護猫関連のサイトもありますが、それらが本当に犬や猫の幸せを考えて運営されているものなのか、営利に近い業態になっていないかを見極める視点を持つことが大切です。

譲渡費用が高すぎる保護犬・保護猫の譲渡サイト

「保護」と称しているもののペットショップと保護相場の何倍もの金額で譲渡されている場合は、利益を乗せて販売していると予想されます。個人がマッチングサイトで保護犬・保護猫を譲渡している場合も同じです。

また、その譲渡に乗じてペットフードやペット保険を販売していることもあります。ペットフードや保険の販売自体は違法ではありませんが、結果的に営利と非営利の線引きが曖昧になってしまうことで、保護ビジネスに繋がることが懸念されます。

保護犬・保護猫をうたったビジネスモデル

そもそも保護犬や保護猫を利用してビジネスを展開しようとしていることは動物愛護の観点からはずれています。「保護犬・保護猫」というワードを使いながら実態は表面的でありビジネス的な思惑が感じられる施設やサービスには注意が必要です。クラウドファンディングも正しい用途に使われるかどうかは見極めなければいけません。現時点で、これは保護ビジネス、これは保護ビジネスではないという線引きは極めてグレーですが、飼い主や関わる人の善意から利益を搾取しようとするスタンスも承服し得ない行為と捉えています。

もちろん保護犬・猫カフェが全て保護ビジネスであるという訳ではなく、動物愛護の視点から動物に配慮があり、営利目的でなく里親探しのためであれば問題ありません。しっかりと中身を見なければ判別できない状態であるのが、現状の難しいポイントです。

保護猫カフェを例にとっても譲渡目的の正しい運営であることもあれば、営利目的で保護猫が使われていることもあり、見極める力が必要(画像はイメージです)

負の連鎖が止められない「保護ビジネス」とどう向き合うか

ここまで、様々な問題点を指摘しましたが、保護犬や保護猫と暮らす人間として、これらの問題を解決するためには正しい「保護」であることを見極める力を持つことが一番です。「保護ビジネス」にNoを突きつけられる飼い主である必要があります。

それではどのようなポイントで、正しい保護団体を選べばいいでしょうか。

1.保護犬や保護猫の履歴や性格、健康状態を保護団体が把握してるか?

保護状況、メディカルチェックでの健康状態、その犬猫の性格を把握たうえで、マッチする譲渡先を選んでいるかを確認しましょう。丁寧にこの作業を実施している保護団体は、簡単に譲渡も行いません。トライアルも含め、飼い主と犬や猫が幸せに暮らしていけそうかという視点でしっかりと検討しています。

2.譲渡費用が妥当か?

前述した通り保護団体は、非営利と定められています。そのため、譲渡費はかかった経費(医療費やペットフード代など)を請求するのが一般的です。猫であれば3万円前後、犬であれば5万円前後が妥当と言われています。

ちなみに、数年間に及ぶフード契約や保険加入義務、高額の賛助会員費などを請求することは疑問が残ります。

保護団体によっては譲渡費はゼロ、というポリシーを持ち活動をしている団体もあります。それは、保護された犬猫は本来売り物ではなく、保護活動は命を救うリレーだから、という考えからです。しかしながら、医療費や飼育費はかかります。つまり犬猫個別の譲渡費ではなく、その団体の活動自体に賛同してもらい寄付を募っているのです。

保護犬や保護猫を譲り受ける際には、正しい費用であるか、非営利に見えても営利ではないかが判断の基準になります。

3.動物福祉的な観点で犬や猫を扱っているか?

保護犬や保護猫に出会った時に、衛生的に保たれているか、犬であれば毎日お散歩に連れて行ってもらっているか、保護施設で幸せそうに過ごしているかなどは、確認するべき事項です。

トライアル(迎えることを決断した後に2〜3週間のトライアル)期間があるかどうかも大切です。ネットで申し込んで、振り込みさえすればどこかから長距離輸送されるような扱いは動物へダメージを与えます。

終わりに

この記事で最もお伝えしたいことは、「保護」されるべき犬や猫が正しく「保護」される必要性と、それがビジネス(営利)に結びつくことなく、愛ある家庭に引き取られることの大切さです。

見た目重視のブリーディング、人気犬種・猫種の偏り、利益至上主義の販売手法、「保護」であることのブーム、飼い主の知識不足など、複雑な要因が保護ビジネスを生み出していて、それを一掃することは簡単なことではありませんが、まず第一に犬や猫が幸せに生きるという動物福祉の観点を広めていきたいと考えています。

保護犬や保護猫と暮らしたいと考えた時に、ぜひ一度立ち止まってその譲渡が適切かを考えて行動に移していただけますように。

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