牛猫りりぃ

To:リリィ

From:さやか

猫は気まぐれというがなかなか的を得ている言葉だと思う。我が家の猫リリィは生後1ヶ月くらいで保護され知人伝いにやってきた。黒白のまだら模様でか細くミャーミャー泣く姿を見ると居ても立っても居られず家族みんなで世話をして猫が早く我が家になれるように手を尽くした。しかし愛情が強すぎたのかリリィは全然懐いてくれなかった。「猫は膝にも乗るもの」これは数多の猫飼いが言っているではないか。わたしも膝にリリィを載せたい。是非ともやらなくてはと思いさっそく寝ているリリィの側に近づき膝に乗る流れをつくる。内心ドキドキして待っているのに一向にリリィは振り向いてくれない。こうなれば無理やりと思い「えいっ」と載せるがリリィはすっ飛んで逃げてしまう。せっかく猫を飼ったのに膝にすら乗らないなんてこれでは飼い猫の意味がないのではないか。もしかしたらまだ愛情が足りないのかもしれない。きっとそうだと思い膝乗りへの特訓は日課となった。そんな折、リリィの調子が悪くなった。いつもご飯をがつがつ食べていたのにめっきり食も細り家中の人目につかない場所に潜り込み寝てばかりいるようになった。風邪でも引いたのかもしれないと思い、慌てて近所の病院に駆け込むと、先天性の再生不良貧血と心臓病と診断され安楽死を勧められた。ショックだった。いくら懐かない猫でもあんまりではないか。これから絆を深めようと思っていた矢先に目の前が真っ暗になる気持ちだった。なんとか治療できる病院はないのかと家族みんなで動物病院を探しまくった。早くしないとリリィが死んでしまう。みんな必死だった。1週間くらい探し続けようやく診てくれる先生を見つけた。薬も見つかったが長く生きて5年でしょうと言われてしまった。5年なんてすぐではないか。私は途方にくれた。たくさん悩んだけど結局リリィが精一杯幸せに過ごせるようにしようと皆できめた。我が家に来て良かったと思える一生にしたいと思った。あれから5年。今年リリィは5歳になる。毎日薬を飲んでいるので、すこぶる健康だ。ご飯もモリモリがつがつ食べて体重も6キロ超え絶好調だ。毛の色が黒白だから寝ている姿など牛そっくりになってきた。相変わらず抱っこは嫌がるし、膝にも乗れない。でも家族の誰かが帰ってくると玄関まで出てきてお迎えをするようになった。猫は気まぐれだからしょうがない。いつか牛猫が近づいてくれる日を心待ちにしている。