よく笑うようになったカーシャ

To:カーシャ

From:Katz

「うわぁ、この犬コワーイ」 カーシャと散歩していて小さい子供と遭遇すると、必ずこう言われました。 これはカーシャが我が家にやって来たばかりの頃の事の話です。 カーシャは里犬として我が家に来ました。1歳と10ヶ月の時です。札幌から知床まではるばる車でやって来ました。その頃のカーシャは確かにきつい顔をしていました。「ラブラドール犬でも、こんなきつい顔をした犬もいるんだね。キツネみたいな顔だ」と、そのころ夫婦で語り合りあっていました。その頃のカーシャは、いつもギラギラした目をしていて、いつも怖い顔をしていました。たとえ子供でなくても、正面からこんな顔の犬が早足でやって来たら、ギョッとしたでしょう。 恐ろしい犬相の犬が、うつむき加減で、まるで突進するように歩いて来たら、子供なら恐怖を感じたでしょう。カーシャがうちに来たばかりの頃は、子供と遭遇する度に、「この犬コワーイ」と度々云われました。顔は怖くても、性格はとても控えめで、物分かりの良い、とても良い子のカーシャだったのですが。怖い怖いと度々云われる我が犬が不敏でなりませんでした。 里犬としてある日突然、別の家族と暮らす事になるのは、とてもストレスのかかる出来事だと思います。この状況を理解出来ないながらも、カーシャは一生懸命に新しい環境に適応してくれました。 カーシャが私達の生活に完全に慣れて、我が家の犬と本当に言えるまでに約3年近い日々が必要でした。その頃からです。カーシャと散歩していると、「わーカワイイー」と、小さな女の子が笑顔で近づいて来るようになりました。「この犬撫でていい?」と、初めて会う、しかも大型犬を恐れる事なく近づいてきます。カーシャが来たばかりの頃との違いに私は驚きます。 散歩で子供だけではなく、中高生の女子とすれ違う度にやはり「かわいいー」と声を掛けられます。父ちゃんとしては、これほど嬉しい事は有りません。 カーシャが我が家にやって来て今年で5年目。とてもきつい顔をしていたはずの犬が、今はとてもかわいらしい顔に変わっていました。これは歳を取ったせいだけじゃないと思います。「カーシャ」と呼びかけると、目を輝かせて私の下に走ってきます。気がついたら、カーシャは良く笑う犬になっていました。今日もニコニコしながら散歩です。 家族になると云うのは時間のかかるものなんだなぁ、とこの経験で学びました。