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STORY with Pet

「子どもたちにとって、愛犬との生活は とても貴重な勉強になると思います」

さまざまな分野の第一線で活躍する方に、ペットとのスペシャルな関係をインタビューする連載企画『しっぽの家族と暮らすワケ』。
今回はアーティストの八神純子さんです。

Profile
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  • 八神純子

    Junko Yagami

    日本を代表するシンガーソングライター。
    豊かな感性から生まれる音楽や歌声は、高校生のころから
    海外のコンテストなどで入賞を果たすほど。

    日本では20歳で「思い出は美しすぎて」でプロデビュー。
    その後「みずいろの雨」「想い出のスクリーン」「ポーラー・スター」
    「Mr.ブルー 〜私の地球〜」「パープルタウン」などのヒット曲をとばした。

    1986年音楽プロデューサーJohn Stanleyと結婚し2人の子供とロスに暮らす。
    2011年3月の東日本大震災を受けて『トランス・パシフィック・キャンペーン』を
    自身で企画、被災地での支援活動を継続して行っている。

     

幼い頃から犬が大好きで、現在アメリカのロサンジェルスで暮らしている八神さん。

2014年2月には愛犬との思い出をもとに創られた『チョコと私』が、NHKの『みんなのうた』で話題になりました。

『チョコと私』はどんな想いから生まれたのか、愛犬との付き合い方はどうあるべきかなどを伺いました。。

 

―『チョコと私』は、約10年前に死んでしまった愛犬「チリ」との日々をもとにできた歌だそうですね。

 

「本当はチリとの思い出を、絵本にしようとずっと思っていました。

私は野生のリスや野ウサギが出てきたりする場所で暮らしていますが、チリがいなくなったばかりの頃は、散歩をしていても私を追いかけるチリの黒い影がないことに気付き、落ち込みました。

そんなある日、家の近所を散歩中に現れた野ウサギを見ていたら、ふと「私とチリが散歩をしているところを、この野ウサギはいつも見ていたんだろうな。それなのに今日はなぜ私一人で散歩しているんだろう?と不思議に思っているかな」と思ったんです。

そこから、リスや野ウサギたちが「where is chili?」(チリはどこへ行ったの?)と尋ねてくる場面が浮かんできて、それを絵本にして、たくさんの子どもたちが「where is chili?」と覚えてくれたら、チリが死んでしまったことを自分の中で受け入れられるようになるかなと考えたんですね。

だけど、絵本にしようとチリのことを思い出すと、その度に切なくなって、なかなか思うように進まなかったんです。

そんな時にNHKの『みんなのうた』のお話をいただいて、チリの歌もいいなと思ったんです。」

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―愛犬との思い出を歌にするとなると、つい歌詞に思い出をたくさん綴ってしまいがちですが、この曲はどちらかというとサラッとしていますね。

 

「それは、ちゃんと「チョコは死んだ」と言い切ったことが良かったのかもしれません。

私の最近のライティングパートナーで、非常に素晴らしい歌詞を書くKAZUKIさんと共に書いたのですが、「死んだ」とはっきり言うべきかどうか、何度も話し合いました。

結局、言い切ることが一番チョコに対して優しいことになるんじゃないか、それに合わせて歌い方をこうしようかというふうに曲を作っていきました。

KAZUKIさんとは、私の想いをいっぱい盛り込むのではなく、ストーリーを淡々と展開させていくことで、聴いた人が自分の経験と重ね合わせていただけたらうれしいね、とも話しました。」

―この曲を聴く子どもたちに、どんなことを伝えたかったのでしょう?

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「犬の命は短く、一度出会ったら辛い別れを経験しなければなりません。

しかしそれは、ある生命の一生を見るという、とても素晴らしい勉強だと思うんです。

だからこそ曲にしたし、絵本にしようと思っているんです。

ただ、子どもたちがこの曲のすべてを理解するには難しいかもしれません。

例えば、主人公は何年か後にチョコと再会するんですが、再び飼い主と愛犬という関係になるのではありません。

あくまで通りすがりの人と、他人の愛犬なんですね。

それでも主人公とその犬だけは「あ、また会えたね」とお互いがわかって、その上でそれぞれ別の道を歩いて行く。

そういう死んでしまった後の世界観は子どもにはわからないでしょう。

それでも、この曲を聴いたら「今日は散歩するのが面倒だな」という気持ちが「よし、散歩に行こう!」になるとか、愛犬との付き合いは思っている以上に短いものなのだから大切にしなきゃ!と思ってもらえたらうれしいですね。」

 

―ところでアメリカの犬に対する保護活動にはどんなものがありますか。

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「保健所などから引き取って次の飼い主を探すNPOのシェルターがあるのですが、そこでは次の飼い主探しを、人間の養子縁組の事前調査さながらに行います。

家族構成の調査からはじまって、どんな場所で飼うのか実際に確認し、飼い主としてふさわしいかどうか本人の面接まで行います。

私も犬を飼うには、新しい家族を受け入れる、それこそ養子をもらうような覚悟が必要だと思います。
 

今日という日が明日も続くと思ったら大間違いで、突然仕事を失ったり、病気になったり、人生はいろいろある。

その時に、ただかわいいからで飼っていたら、簡単に手放してしまうかもしれません。

しかし自分の家族ならそんなことはしませんよね。

『チョコと私』には、犬を飼っているすべての人にそのことを再認識して欲しいという気持ちも込めています。」

取材後記

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八神さんが初めて愛犬との別れを経験したのは小学校6年生の時。以来、幾度となく出会いと別れを繰り返しています。

「これまで亡くなった愛犬との日々を歌にしたことはなく、せいぜい愛犬への気持ちをラブソングのワンフレーズに使った程度」で、愛犬をテーマに書いて歌ったのは今回の『チョコと私』が初めてだそう。

何のために、こんなにも我慢を重ね、
孤独に耐え、それでも前に進もうとしているのか、 自分でも時折判らなくなる時もあります。

華やかに見えても、現実の日々は我慢と忍耐の連続でした。

かつての同世代の起業家のほとんどは表舞台から姿を消しました。

成功を重ねるたびに孤独の度合いは増していきます。

それでも、なぜ前に進もうとしているのか――。

「それをはるかに上回る希望があるから」

起業家の人生は、その言葉に尽きるのかも知れません。

仕事でアメリカと日本を行き来している彼女ですが、『チョコと私』の主人公であるチリは、彼女が日本へ旅立つ日に突然体調を崩し、日本に着いてから訃報を受け取ったそうです。

最後まで一緒にいれなかったという後悔の念が、彼女のチリへの想いをさらに深くしたようです。

だからなおのこと、絵本や曲として表現したいという気持ちが生まれ、その反面、思い出を振り返る度に辛くなり、その狭間で結果的に約10年間という長い間、想いを温めることになったのです。

チリはブービエ・デ・フランダース。

チリが体調を崩したときに彼女は車で病院までは届けたのですが、その際にチリが重いため、自分一人で車に乗せることができませんでした。

「その時に、私には飼う資格がなかったのかな、そこまで考えて飼うべきだったなと思ったんです」。

だから、現在はコッカプーとシュヌードルという小さな犬にしたそうです。

愛犬との付き合い方を強く考えさせられた今回のインタビュー。

犬を飼うすべての人が八神さんのように、あるいは『チョコと私』を聴いて思慮してくれれば、いつか我々の活動「アニマル・ドネーション」が不要になるかもしれません。